理論原価と実際原価

原価を計算しても机上の空論だ!と言われて困っている方へ。
今回は、理論原価と実際原価の比較です。飲食店の経理を念頭に書いた記事ですが、工場などでも同様の考え方・見方で原価を考える必要があります。

理論原価とは?

理論原価とは、お店の売上に対して本来かかるべき原材料費のことです。より詳細に把握したい場合は、一品当たりにかかる経費全てを含めてかまいません。とはいえ、原材料費以外で計算しやすいものは、お客様お一人当たりで提供する数が決まっている割りばしやお手拭き程度だと思います。野菜や肉など、価格変動のあるものは、平均kg単価を使用します。在庫について使用した繰り越し在庫については、その在庫を仕入れた金額を使って計算してください。月次で計算するケースを想定して、以下に例を示します。
単価=(先月在庫量xその仕入れ値+当月仕入れ額-当月末在庫量xその仕入れ値)÷(先月在庫+当月仕入れ量-当月在庫量)
これを原材料ごとに計算します。
次に、レシピと原材料単価から、メニューごとの平均原材料費を計算します。
最後に、当月のメニューごとの売上数に平均原材料費を掛け、全て足し合わせます。これが当月の理論原価になります。
平均単価を出す工程が少し複雑になりますが、仕入れの管理がしっかりできていて、エクセル等の表計算ソフトに情報入力が済んでいれば毎月シートをコピーして使用するだけで自動で計算が出来るようになります。

実際原価との比較

実際原価は当月に使った原材料費なので、計算は簡単です。在庫の処理はその在庫の仕入れ値を使って行ってください。
一般的に実際原価>理論原価となりやすいです。理由は様々なところでロスが出るからです。
・仕込みロス
・廃棄ロス
・ポーションオーバー
・食材持ち帰り
・まかない
などなどが原因です。原材料ごとに理論原価と実際原価の差が異なることもあります。その場合は日々使用量と在庫のチェックを行うことで、より詳細な原因の究明ができます。この理論原価と実際原価の差の原因の究明こそが、ロスの削減につながります。差の大きいところが削減しやすい部分ですので、集中的に管理してください。理論原価と実際原価の差を従業員に情報開示して、原因の推定と対策を同時に発表することで、目的意識を持った改善行動が促せます。ただし、食材持ち帰りについては例外です。従業員に窃盗の疑いをかけることになりますので、慎重に対応してください。一般的には食材がしっかり管理されている、ロスの原因を探られている、という会社の姿勢が伝わることで、持ち帰りは激減します。

ロス削減の目標は仕入れ額の5%以上

これまで、数字を使ったロス削減策を導入していなかった店舗では、削減目標は仕入れ額の5%以上です。
というのも、これが私たちの実績値だからです。みなさん努力されているにも関わらず、数字管理で徹底的にロス原因の究明を行うとこのくらいの削減は見込めます。仕入れから在庫の管理まで、労力はかかりますが、それに見合う以上の効果です。
是非挑戦してみてください。
エクセルの使用などで効率的な管理をしたいけど、なかなか難しい!という方向けに、店舗の事情に合わせたご支援も実施しております。
挑戦したい方は是非、お声かけください。

メニュー・商品リニューアルに必須!ABC分析とは?

メニュー・商品のリニューアルで必須なこと、それはお店・会社にプラスになる改定を行うことです。言葉にするのは簡単ですが、プラスになるかどうかはどう判断するのでしょう?その基準を明らかにしてくれるのがABC分析とクロスABC分析です。「これはよく出る」「これは面倒だからやめる」などと感覚に頼っていると、売上は維持できても利益率が下がったりと、思わぬ状況になりがちです。勝ち残るためには、苦手なことでも面倒がらずに挑戦していきましょう。

ABC分析とは?

さて、そもそもABC分析とはどんなものでしょうか?基本的な考え方は簡単です。ある基準を元に、上位から並べて、合計で7割を占めるグループをAグループ、7~9割を占めるグループをBグループ、残りをCグループとします。売上の多い順にメニューを並べて、それぞれの売上を足していきます。売上100万円のお店であれば、Aグループの売上合計は約70万です。Bグループは約20万で、AとB合わせて約90万です。また単月の分析ではぶれが大きいので、季節要因なども考慮しながら3か月程度をまとめて分析することをお勧めします。ここまでの分析でCグループが改定の対象になることはなんとなく感じて頂いていると思いますが、メニュー改定はそう単純ではありません。それに、ここまでであれば直感で「これは出てる、あれは出てない」と分類するのと大差ないですよね。直感とは異なるのはこの先の、クロスABC分析を行うことです。

クロスABC分析とは、売上以外にも別の基準でABC分析を行うことです。そして、2パターンのABC分析の結果をグループ分けします。もう一つの基準は、基本的には粗利高になります。そして、それぞれのメニューごとに売上のABCと粗利高のABCの記号を書きます。

分析の結果を検討しましょう
AAとなるメニューは優秀ですよね。磨きをかけることで更に利益に貢献します。販売数自体も多いなら、提供時間短縮の対象にも最適です。

CA(売上は低いが粗利は大きい)になったメニューは、売れればお店にとっては非常にうれしいメニューです。どうしたら販売数が伸びるのか、積極的に工夫をすることが望まれます。

AC(売上は大きいが粗利は小さい)になったメニューはお客様にとってはお値打ちの商品です。この場合の考え方は主に2通りになります。

・お店のコンセプト上、存在意義が薄く、粗利以外にも専用食材の存在・提供時間など、お店の負担になっている場合

売れてはいるものの、経営上は負担にしかなっていないです。思い切って削ることで、お店全体のサービス向上を図りましょう。

・意味のある商品の場合

集客用と位置付けてあるメニューならば、そのままにしておいても問題ありません。それでも売上Aに分類されるということは、数量は多く出ているはずです。ロスや提供時間の改善を行う候補にはなりますので、しっかり育てましょう。ただし、メニュー自体は必要でも、原価計算の間違いなどで意図せず粗利が低い場合は対応が必要です。適正な粗利が頂けるよう、値上げを検討してください。この対応は必須です。というのも、お店のコンセプトにない安売りを行ってしまうことは、客層の変化を起こすなど悪影響をまねくからです。

CC(売上も粗利も小さい)になったメニューは基本的にACと同じ対応です。意味がある商品であれば適切な告知が必要です。いわゆる松竹梅の松に当たる商品であれば、平均客単価の上昇に貢献します。その場合は、専用食材の排除など、過度なお店への負担を減らす検討が求められます。

以上のように、メニューのリニューアルだけでなく、オペレーションなどの改善対象の選択にもクロスABC分析は役立ちます。必ず経営の武器になりますので挑戦してください。

清掃用具も管理しよう!

清掃の管理は食品業界の基本ですね。よりうまく「清掃」を管理するにはどうしたらいいでしょうか?清潔さを維持するには、汚れたら掃除する、毎日できるだけ掃除するなどの曖昧で頑張りに頼ったやり方では必ず「ムラ」が発生します。

まとめると以下の3つがポイントです。

  • 用具の管理
  • マニュアルの作成
  • スケジュール管理

清掃用具も管理する

清掃用具を収納する場所は絶対決めます。そして、ほうき1本から洗剤に至るまで、置き場所を決めます。そして、掃除用具ひとつひとつと、その置き場所に、名前を書き込みましょう。誰が片づけても同じ場所に同じものが置かれる工夫が必要です。従業員の意見も聞いて、必要なものはしっかり揃えるようにします。

清掃は仕事の一部ですが、道具が見当たらない場合、最悪清掃されていないのに、したことにされるケースまであります。道具探しで時間を浪費して清掃不十分ということも起きがちです。清掃用具は掃除に必須ですので、道具もしっかり管理しましょう。

清掃マニュアルを作る

どの道具をどのように使って掃除するべきなのか、誰にも明確に分かるように、マニュアルを作りましょう。マニュアルを作るのは手間がかかりますが、様々な改革に積極的に取り組むことで、将来的には従業員も増えていくでしょう。その時に作っておいてよかったと思うのが、誰でも分かるマニュアルです。

気になったところを積極的に掃除できる環境は、従業員のやりがい・やる気を引き出すポイントのひとつです。いざ必要な時には作成が追い付かないのもマニュアルです。いつまでも、きれいな店舗・工場でゲストをおもてなししていくためには、不要と思える時期からコツコツと作っていくことが重要です。

また、作ったら作りっぱなし、というのはNGです。マニュアルの分かりやすさ、適切さについては常に意見を聞きながら改善をしてください。マニュアル置き場についても、事務所に「マニュアル集」として置いておくのはあまりよくありません。従業員であればすぐ見れる場所に、簡単な手順を書いたメモ程度のものを貼りつけておくのも立派なマニュアルの一部です。とにかく目標は掃除をやりやすくすることですので、従業員目線でマニュアルを整備していきましょう。

清掃カレンダー・チェック表を作る

汚れていくスピードは場所によって異なります。店内・工場内のすべての個所について、いつ掃除するべきなのか一目でわかるようにカレンダーを作りましょう。毎日する個所、曜日ごとにする個所、などに分けてもOKです。管理者を含む全従業員が一目でその日に掃除するべき箇所が分かることが大切です。加えて、実際に掃除できているのかどうか、全員が分かる必要があります。情報共有のためにもチェック表は作りましょう。

率先して掃除する習慣・文化を作る

ゲストに気持ちよく過ごしていただくためには、清潔感は必須です。ゲストのおもてなしに重要であることが新人従業員にも伝わるように、管理者・先輩従業員が率先して清掃する姿を見せるよう、しっかり取り組みましょう。

気づいた点・清掃の足りなかった点はすぐスケジュールに反映させる

始めから完璧なマニュアル、清掃スケジュールというものはできません。状況に合った清掃の方法・スケジュールは一生懸命継続することで見えてきます。日々改善できるように、気づいた点やスケジュール外で清掃を行った場所などは情報を集めて、よりよい清掃管理ができるようにしていきましょう。

開発費用はおいくら?

メニューをはじめ、何かを開発するときの費用対効果の検証をしているところは大手を除きほとんどありません。効果の検証はアンケートなども活用しないと難しいことと、そもそも開発費用自体、把握できていない場合がほとんどです。適正な開発ペースと値付け、目標品質を考えるためにも、メニュー開発費用について考えてみましょう。

まずは人件費・材料費から!

普段の原価率計算以上に詳細に把握することは現実的ではないですよね。ということで、人件費と材料費をきちんと出しましょう!
同時に何品も開発する場合は、人件費が出しにくい場合があるとは思います。その場合は使った時間を品目数で割ってもかまわないので、いったいいくら使ったのか、おおよそでも数字を出すことが大切です。

設備投資はしたのか?

開発するメニューによっては、新しい調理器具を導入する必要もありますよね。この場合は人件費・材料費だけでなく、設備投資も必要になります。この様なメニューの場合は設備投資額もきちんと分かりやすく記録しておくことが大切です。

新メニューの費用対効果は?

メニュー開発の方向性があっているのか、開発費用と新メニューの粗利を比較してみましょう。この際に、新メニューでしか使用しておらず、ロスになった食材分の金額は粗利から引きます。飲食店においてはこの額はほとんど発生しないはずですが、気合を入れすぎると思わぬロスが発生することもありますので、きちんと調べてください。新メニューの性格上、常連さんに飽きさせない等の役割もあるため、粗利が開発費用ととんとんであるならまずまず目的は果たしたと評価できますね。
とはいえ、全体の売上のうち、新メニューが占める割合が大きすぎる場合は注意が必要です。メニュー全体のリニューアルも選択肢に入れつつ、戦略を考え直す必要があります。

新メニューの開発だけがメニュー開発なのか?

結構見かけるのが、メニュー開発=新メニューの創出という思い込みです。
提供スピード改善のための調理法開発、看板メニューのブラッシュアップなども全てメニュー開発です。
これらの既存メニューの改善開発の場合は、単に粗利と比較すればいいわけではありません。開発目的を達成できたのか?その費用はいくらだったのか?適切に比較してください。

斬新なメニューは飽きやすい

これまで数百品ほどメニュー開発をしてきましたが、その経験上、斬新なメニューは飽きられやすいです。
圧力釜や電子レンジなど、比較的近年開発された調理法もありますが、それでも全世界で数億人が料理を毎日毎日しています。料理を楽しむ余裕のある人・プロの料理人に絞っても相当な人数でしょう。定番は、そのような毎日何百万何千万と繰り返される料理の中で生き残ってきたものです。斬新と感じられるものの多くは、既に誰かが試して生き残れなかったものがほとんどを占めるのも、上記事実を考えれば納得いただけるのではないでしょうか?そもそも斬新とは、言葉を変えると奇抜ともいえるのです。
一方で、斬新なメニューは情報も少なく、開発コストはかさみがちです。
もちろん、お客様にとってのインパクトも大きくなるメリットはあります。
往々にして自信作と言われるものは斬新=奇抜なものになりがちです。そのような料理に対する評価は「おもしろい」「おいしい」などポジティブなものが多くなりがちなのも要注意です。試作品の評価をしてもらう時には、言葉だけでなくたべっぷりなど、いつも以上に細部にわたって観察することが大切です。
料理人にとっては、斬新なメニュー開発が楽しいのも事実ですし、ヒットを夢見られるという点でも、やりがいを感じられるのは間違いないです。とはいえ、経営者としてはこのような傾向を、きちんと把握しておくことは必須だと考えます。

設備機器はトータルコストで判断を!

初期投資を抑える、このフレーズは多くの人から口を酸っぱくして言われることだと思います。
起業系のセミナーでもかなり頻繁に言われますよね。
もちろん、初期投資を抑えることは非常に重要です。
とはいえ、現在の日本においてはメンテナンス費用で利益を出す会社が増えてきていることに注意が必要です。
購入している厨房器具が壊れたとして、すぐに買い替えを検討しますか?しませんよね?
そこはもう、ビジネスチャンスになっています。いわゆるゆでカエル戦略ですね。
カエルは熱湯に入れるとすぐ飛び出ますが、水からゆでていくと熱くなったことが分からずに茹で上がるまで気づかないとかいうあれです。

本当に大事なのは、トータルコスト

簡単のためにご飯を炊く炊飯器のことを考えてみましょう。味や保存性など、コスト以外の点は全て同じだと仮定します。
5万円で1升炊くのに100円かかる炊飯器と、10万円で1升炊くのに50円かかる炊飯器、どちらがお得でしょうか?
1000升を超えて使うなら10万円の方がお得ですよね。
単純な光熱費だと、非常に分かりやすいです。ところが、現実には、必要な光熱費はごまかしもあります。
水温が高い夏を基準に測定した場合と、平均気温を基に測定した場合では違いがでるのはお分かりいただけると思います。
実際にはこれに、修理頻度・その際の費用も掛かってきます。
お店を長く続ける前提であれば、当然、お米1升を炊くのに実際いくらかかったのか、が大事になります。
表現を変えると、お米を炊くために5年・10年でいくらつかったのか、ということです。

例外は極力なくしましょう

従業員は意外と会社のコスト感覚に敏感です。普段から、コンセプト実現・強化のためにコストを削減しよう!削減分をお客様のために使おう!と言っていても、効果の不明な設備投資があると途端に士気に影響が出ます。判断に困ったときは、従業員に分かりやすく投資の理由を説明できるのか?という点を考えてみてください。このくらいいいじゃないか・・・、という感覚で例外を作ってしまうことで、お店のコンセプトに向き合う姿勢がぶれていきます。よりよいお店作りのためにも、例外は極力なくしましょう。コンセプトに向き合えば、自然とトータルコストで比較することになります。5年10年のスパンで考えたときに、トータルコストがどうなるのか、調査は骨が折れますが、お店のために是非しっかり調べてから、機器の選定をしてください。

手狭なお店で客数を増やすには?

手狭なお店で客数を増やすにはどうしたらいいでしょうか?1日の客数は = 客席数x稼働率x回転数で計算されます。客席数を増やすことは基本的に難しいと思われるので、客席の稼働率と回転数を中心に考えてみましょう。

稼働率を上げるには?

客席の稼働率は満席時に何人のお客様が着席されているか、という割合です。100%になることはまずありません。というのも、二人掛けの席に1名で座っていることや、4人掛けのテーブルで2~3名ということもありますよね。

手狭なお店の稼働率は基本的に高いとは思いますが、テーブル席があるような場合は相席しやすいトレーを使用するなど工夫が必要です。また、来店されるお客様のパターンを見極めて、二人掛けや4人掛けの席をうまく作ることも有効な対策です。

回転数を上げるには?

回転数に影響を与えるのは お店側が席の準備・料理の提供にかける時間 と お客様のお食事の時間 です。お客様のランチタイム・ディナータイムはおおよそ決まっています。その時間の中で回転数をあげるには、お店側の持ち時間を極力減らす必要があります。

特に提供時間に配慮を!

ピークタイム、つまり「書き入れ時」の収入を増やすためには料理の提供時間の短縮が効果的です。立地等にもよりますが、提供時間の短縮は適切な回転率をたもち、満席によるお客様の流出を防止します。とあるラーメン店では提供時間を10分から6分へ短縮したところ、ランチタイムの回転率が5回転から7.5回転へ増加し、売上も15%増加しました。特にビジネス街など、お急ぎのお客様の利用が見込めるところでは速さだけで、立派なコンセプトになります。

回転数が多ければ多いほど、時間短縮の効果は大きいのですが、そのようなお店では複数名で調理していることがほとんどだと思います。複数名で作業をする場合は、必ずすべてをマニュアル化し、1秒でも短縮するという気持ちで作業を詰めることが有効です。全ての材料・調理器具は必ず同じ場所・同じ向きで置くように徹底します。そうすることで、無意識のうちに動きが止まることを防止します。手を何度も拭かなくて済むように適切にトングの配置や分業をします。極端な例ですが、1つの料理で10回も手を拭く動作が入るようでは、それだけで30秒程度ロスしています。また、布巾自体の衛生度はどんどん落ちていきますので、衛生面で考えてもよくありません。このような作業全体を効率化するときは、思い切ってストップウォッチで調理の作業とそれぞれの所要時間の最大・最小・平均を出すことをお勧めします。

実際に時間と向き合うことでいろいろなアイデアや改善点が出てくるものです。

基本的には稼働率・回転数ともにあげていくべきものですが、お店のコンセプトに照らし合わせてふさわしくないのであれば、付加価値を訴求する。意味のないことは徹底的に効率すべきですが、意味のあることは非効率でもかまいません。客席の稼働状態一つとっても、お店のコンセプトに照らし合わせつつ、効率化していくことが重要です。

料理の提供温度

飲食店にとって、料理の最適な提供温度は何度でしょうか?多くのお店では、料理ごとに美味しく感じる温度を意識しながら提供されています。基本的にお客様は料理を冷ますことはできても温めることはできません。なので、もっともおいしい温度より上に設定して提供することが一般的です。
ですが、お客様のニーズはどうなのでしょうか?少し考えてみましょう。

食事にかかる時間を重視する人の存在

料理を提供するまでの時間が大事だ、というのは飲食業界に携わっていれば常識ですね。実際に日本政策金融公庫の調査などでもそれは裏付けられています(お店選びの基準調査はこちら)。このように、ランチタイムは料理の提供時間を重視する方が非常に多いため、リサーチでも項目として漏れていますが、実態は「食事にかかる合計時間」で判断していると推察されますその推測を裏付けるように生活情報リサーチサイトのTEPORE様の調査でもおよそ1割の方が外食を使う理由として手早く食事を済ませたいから、という理由をあげています(TEPORE 「外食」について)。

急いでいるときに熱いものが出てきたら?

一方で、お店の側は提供時間には気を遣うものの、やはり美味しいものを食べてもらいたい気持ちが強いようです。直接裏付けるデータはないのですが、一部例外を除いて基本的に熱め~適温での提供を受けることが多いですよね。ですが、その気持ちに行き過ぎを感じる場合もあります。汁物などでは特にそうですが、熱い状態であればタイミング次第で調整できるでしょう?と言わんばかりに激熱の状態で提供されるお店も身近に結構あります。チェーン店でもありますよね。

激熱の味噌汁・・・急いでいても残すのは抵抗を感じるのではないでしょうか?実際に、少し古いデータですが、生活情報リサーチサイトのアンケート調査でおよそ65%以上の方が食べ残しをすることに抵抗感を感じているそうです(参照:TEPORE 大人の食学 食べ残し)。

さて、ここで少し考えていただきたいのですが、あなたのお店のお客様は短時間で食事を済まされる方の割合はどの程度でしょうか?
それらのお客様は熱めに提供している汁物を残す割合は、他のお客様と違いませんか?
もし特定の行動(ここでは急いで食べる)を取る方が食べ残しをされるということは、そのサービスに改善点があるということですよね。
それも、残すことに後ろめたさを感じる日本人相手ならなおさらです。

うまい!はやい!やすい!のように、時間に追われる働くオトコ達を応援するお店で、まさかの激熱落とし穴・・・などということが無いように、利用シーンはよく考えて提供温度を決定して頂ければと思います。

さて、こうして振り返ると、麺の硬さ・味の濃さを選べるラーメン店はあっても、提供温度を選べるお店はあまり見かけません。もしかしたら新しい差別化のポイントになるかもしれませんね。

原価率の下げ方(飲食店向け)

原価率を下げるためにはどうしたらいいでしょうか?原価率は基本的な数字なので商売をされている方はよくご存じだと思います。
原価÷売価なので、原価が変われば原価率が変わる、というのは普通の見方ですね。
見方を変えると売価を変えることでも原価率は変わるのです。つまり売価をあげることでも原価率は下がるのです。
今日はこのように様々な角度から原価率を下げる方法を考えていきます。

飲食店での原価率に関わるもの

原価率に関わるものをはっきりさせることで、どうしたら下げられるのか、見えてきます。
大まかにいうと原価率は原価÷売価ですよね。
売価は単純ですので、問題は原価に何を含むか、です。
原価の計算では、大きな工場向けですと人件費や消耗品費等の経費が参入されたりします。しかし、個人店ではそれらをメニュー1食ごとに分解して考えるのはほぼ不可能です。よって固定費となる場合がほとんどです。なので細かいことは考えずに原材料費の比率と思ってください。銀行さんとのやりとりでも、どのように考えて計算したかを説明すれば問題なく話が通じます。

そして、原価率にはメニュー1品当たりの原価率とお店全体の原価率が存在します。経営者にとって大切なのは、お店全体の原価率です。
つまり、いくらの売上を作るために、原材料費をいくら使ったのか?ということです。

原価率を下げる方法は大きく二つある!

経営的にはお店全体の原価率が大切なので、原価率を下げる方法は以下のようにまとまります。
・原価を下げる
 仕入れ価格を下げる
 ロス・廃棄を減らす
 原価を意識したメニュー開発・調理を行う(後日記事を書く予定です)

・粗利を上げる
 売価を上げる
 クロスABC分析などを行い、粗利に貢献しているメニューの販促をしたり、メニューの改廃を行う(後日記事を書く予定です)

お店としてすぐできるのは「原価率の低いメニューを積極的に売る」ことです。お客様のニーズも考慮しながら効果的なキャンペーンを行いましょう。

一般的に、お店全体の原価率の目標は30%ですが、もちろんそれ以上に設定して成功している飲食店も多いです。高原価率戦術は既に広く知られていますし、その先には中食との戦いも待っています。まずは基本を把握して、そこから自店のコンセプトをよく見つめなおしてください。

飲食店のコスト比率

飲食店の主要なコストと目指すべき比率を教えてほしい、という問い合わせを受けてまとめた文章です。これから飲食店を開業する、もしくはすでに開業しているけれど業績を改善したいという経営者様向けの記事となっています。

品質管理とはかけ離れていますが、個人店の品質管理・改善を行う上では避けて通れない数値です。ちょっと前から流行っている高原価戦略と一見相いれないようですが、基本はあくまでこちらの通りです。基本の無い応用は脆いので、古い!と言わずに是非ご一読ください。

まずは何から決めるのか?

実はコスト比率を決める前に、決めるべきことがあります。それは1年間の目標利益です。目標利益を決めるためには利回りを意識してください。利回りは投資額に対して、1年でどれだけの稼ぎがあったのか?という数字です。

1年間の利益÷投資額

で計算します。庶民感覚で言うと、銀行の利息みたいなものですね。一般的に、企業がお金を借りるときは利回りが20%を超える、つまり5年以内に投資額以上の利益を上げることが求められます。日本政策金融公庫が苦しい企業に融資する場合の特例の基準ですら、利回りは最低10%です(政治主導の緊急措置は除く)。

このような事情があるため、どうしても高い数字がひねり出せなかったとしても最低は利回り20%、改善目標の場合は30%以上、開業時の目標であれば40%を設定してください。

設定した利回りと投資額から、必要な売上を逆算することで健全な経営計画が立案できます。
具体的には 利益+経費=売上 で計算します。
ここまで進むと、既に物件が決まっているお店であれば、家賃比率が自動的に出てしまいます。

基本は主要コスト70%以下

飲食店の主要コストは、原材料費・人件費・家賃です。流行りの高原価戦略では、インパクトを強くするために原材料費が40%を超えている!等と、言われていますが、主要経費の合計はやはり70%以下に抑えられています。というのも、主要なコスト以外もやはりなんだかんだで10%程度かかりますし、利益を上げないといけないからです。そもそも、売上高経費率が100%を超えては成り立たないのは考えるまでもないことです。
人並み(といっても、経営者基準なので尋常じゃないレベルですよ!)の努力では主要なコストを70%以下に抑えざるを得なかった、という解釈が主要コスト70%以下の意味するところだと考えてください。

高原価戦略が成り立つ理由

その上で、%と絶対的な額を入れ替えて考えることで、常識を打ち破っているのが近年の成功している業態です。
乱暴に言うと、その場所で普通に売上げられる額の2倍を売上げれば、家賃比率半分、人が2倍効率的に動けば人件費半分だよね?という発想です。これだけでざっくり20%浮きます。その浮いた20%を原材料費につぎこむ、というやり方です。売上2倍で家賃比率半分は出来たとしても、人の効率は倍まではなかなか難しいので、実際には様々なところで効率化が進んでいるのです。この効率化は売上対比のコスト比率だけではありません。宣伝広告等の集客の効率も段違いです。これはその日まで積み上げてきた努力とお店の評価のなせる業と言えるでしょう。

工夫が肝心

上記の計算結果を手にして、「よし!やるぞ!」となる方は稀です。「は?これっぽっちの人件費と原材料費で目標の売上が立つわけないじゃん!」となってしまうことが多いです。ですが、この壁を乗り越えるかどうかが、お店が今後末永く繁盛するかの分かれ目です。メニュー構成や人員戦略など、工夫をこらしてなんとか上記数値に当てはまるコスト配分を実現してください。

FQMサポートでは飲食店向けのメニュー開発・コスト削減のお手伝いも実施しております。「あ!そういうことだったんだ!」というご感想を頂くことも多いので、興味のある方は是非コンサルティングを受けてみてください。

価格決定のポイント

飲食店経営の方に、何度か価格決定のポイントのお問い合わせを頂きましたのでまとめておきます。

お客様の気になるポイント

お客様が気になる価格のポイントの1つは最高額と最低額であることが知られています。たまたま入ったラーメン店などでも、特製ラーメンの金額と最小構成のラーメンの金額は意外と覚えていますよね?でも、間の価格のラーメンの値段は意外と出てきにくいものです。

2つ目は看板メニューの値段です。こちらはしっかり記憶に残ります。さすが看板メニューといったところでしょうか。価格も特別扱いされます。

3つ目はメニュー数の多い価格帯です。メニューを選ぶときにたくさん目にするので、お店の実質的な価格帯として認識されやすいです。

逆に特に意味がないのは細かい価格設定です。例えば580円、640円、660円、680円、780円などのラインナップがあったとして、お客様は真ん中3つを価格で選ぶでしょうか?少しでも安く提供したい、という気持ちは分かりますが、そのコンセプトは580円のメニューで実現してあるのではないでしょうか?分かりやすい価格で食べたいものを選びやすくする心遣いも必要だと思います。端数にはこだわらず、分かりやすさ優先で680円にまとめて、580円、680円、780円の3種類にするべきです。

複数の料理を提供する業種業態ではお会計も重要!

個別のメニューの料金だけでなく、実際にいくら支払ったのか、も当然強く記憶に残ります。原材料の値上がりによる価格変更の際には、お客様の支払額への影響も考慮するといいでしょう。

では実際にどう決めたらいいの?

十円単位については、よく知られたマジックプライスを導入することをお勧めします。日本では縁起の影響で苦労につながる9よりも末広がりの8を選んできましたが、若者向けのお店では特に気にする必要はないです。~90円とすることで、少しでもお店のコンセプトを強化する原資にさせて頂くべきです。高齢者の中にはまだ気にされる方がいるようです。ターゲットによっては~80円としておく方が無難と言えます。とはいえ、串揚げなど単価が安いものはこの限りではありません。その場合は平均的な食事量男性で450gを参考に、予算で決定する方法が分かりやすいです。平均的な注文パターン・原価を想定して、適正な利益率が確保できるようにしましょう。

同種のメニュー内の価格差は最高価格を最低価格の2倍以内に収めるべきだと言われています。あまりにかけ離れた価格はコンセプトがぶれているとも考えられます。本当にそのメニューが必要か、コンセプトに立ち返って吟味しなおしてみてください。この2倍以内にとらわれず、できるだけ価格帯は広がらないようにしましょう。あまり広い価格帯では、お客様がお店を安いのか標準的なのか、高めなのか、評価がしにくくなり敷居があがってしまいます。

最後に、価格は一度決定すると値上げは難しくなります。原価と利益率だけを考えずに、高めの値付けをしましょう。その代わりに、サービス・品質でお店のコンセプトを実現していく!というつもりで決定する方が、のちのち修正が効きやすいです。くれぐれも安売りは注意です。