HACCPとリスク

明けましておめでとうございます。小橋博士です。

本日はHACCPを構築する上で多くの企業で考慮されていない、もしくは、考慮が足りないリスクについてまとめたいと思います。
その前に、そもそも食品からの危害の種類を復習してみましょう。

食品からの危害とは?

食品衛生上の危害要員は大きく分けて3つとされています。

  • 生物的危害要因
  • 化学的危害要因
  • 物理的危害要因

これらの詳細は一般財団法人食品産業センター様のページをご覧ください。
それぞれの危害要因に対してよくみる対策は以下の通りではないでしょうか?

生物的危害要因←一般衛生プログラム(手洗い・消毒など)
化学的危害要因←薬品の管理
物理的危害要因←木材・ガラスの不使用、X線画像診断装置・金属探知機による検査

さて、この中でリスクが残っているものはあるのでしょうか?

化学的危害要因が残されている

審査で多くの食品会社の品質管理担当者と面談をしてきましたが、生物由来毒素についての認識はほとんど確認できていません。
また、生物的危害要因と化学的危害要因の中間に「アレルゲン」も挙げられると思います。こちらはあまり指摘されていないのかはっきりした分類が確認できませんでした。カナダでは科学的危害要因に分類しているようですね。とはいえ、やっかいなのは間違いありません・・・。
さらに、新規化合物の開発を行っている会社では、「人体にあるものを結合するのだから安全(のはず)」「安全なものの結合を切断するのだから安全(のはず)」など衝撃の発言もありました。それを言ってしまうと自然毒を否定することになってしまい、完全に間違いです。また安全性は濃度に依存するものでもあるため、安全との断定はリスクアセスメントの放棄という見方もできるでしょう。

ということで、化学的危害要因についてはHACCPが求める危害要因の特定がほとんど出来ていないように見受けられます。
それもそのはず、衛生教育で化学の話が出てきたことって、ないですもんね。せいぜい毒物が混入されることがある、程度の認識ではないでしょうか。

化学的危害要因は何が入っているか?という物の種類だけでなく、濃度も関係するため難しいというのはわかります。
また、多くの食品会社の設備では検出も特定も難しいです。
だからこそ、リスクアセスメントを実施できるくらいの知識を付けることが大切なのではないかなぁと思います。
実際に何をすればいいんだ!というご質問につきましては、何を作っているかなどによって変わってきますので、コメントやメールでご質問頂ければと思います。

以上、小橋博士でした!

安全なはずのものが実は病気と関係する、に学ぶ~品質管理のすべきこと~

皆さんこんにちは!小橋博士です。

有名な科学雑誌の一つ、natureのオンライン版にトレハロースがC.difficileの毒性を高める可能性を示唆する論文が発表されました。トレハロースは天然に存在する化合物であり、安全性が高いと考えられていた食品添加物です。この論文は、食品すべてに共通する新しいリスクを示しています。このリスクに対して、品質管理担当者は何をすべきなのでしょうか?本記事ではリスクの詳細と対策を簡単にまとめていきます。

論文の概略

論文では、C.difficileによる感染症の流行とトレハロースの低価格化実現と使用量の増加時期が重なることを挙げています。実験事実として、強毒株(C.difficileにも複数の品種があります)は低濃度のトレハロースでも利用できるような遺伝子に変わっていたことを示しています。

マウスによる実験では、強毒株の毒性はトレハロースを含む餌を与えた時に強まることなども同時に示されています。

ここで、注意して頂きたいのは、
・毒素生産とトレハロースの直接的な関係はまだ示されていないこと
・直接的な関係性が示されない限り「たまたまそう見えた」という可能性が否定できないこと
です。

トレハロースがないと毒性を発揮しないということは、腸内で増えることと毒性には直接の因果関係はないと考えられます。
なので、トレハロースの代謝産物が毒素生産を誘発している可能性が考えられます。
また、微量のはずのトレハロースで腸内での増殖が確認可能なレベルになることから、もしかしたら新しい抗生物質の開発につながるかもしれません。
完全に余談ですが(笑)

示されたリスク

今回の論文をシンプルに考えると以下の通りになります。
これまでの食経験とは違うレベルで特定の化合物を食べることで、未知の細菌が毒素を生産する可能性がある、ということです。

トマトで有名になったリコピンや、ダイエットにいいかも?と言われている希少糖、新開発の香料、もちろん新しい食品添加物も、ある日突然降ってわいた細菌によって毒素に変えられるかもしれない、ということです。

リスクアセスメントでは可能性と重大性を考えますが、上記のリスクは発生可能性は非常に低いと考えられます。よって、発生すれば重大であっても現時点で対策が必要なリスクではないでしょう。しかし、一度細菌の変異が起こって毒性を引き起こすようになれば、発生可能性は変化します。

似たような例として、AIDSや多剤耐性菌の発生が挙げられます。
病気がなかった(もしくは広まっていなかった)時代には気を付ける必要もなかったことでも、広がってしまえば対策必須に変わります。

品質管理担当者のすべきこと

多くの品質管理担当者にとって、トレハロースの件は無関係に思えるかもしれません。しかし、上記のように考えてみると、特定の食品添加物やスーパーフードなどを原材料にしているならば、無関係とは言い切れません。

しかし、そのために科学論文を読み漁るのもしんどい限りです。

今の世の中、いろいろな方が解説ブログを記載してくれています。現実的な対策としては、自社で使用している食品添加物や通常より強化している栄養素などをグーグルアラートなどに登録して、こまめにチェックしていくことが最善かと思われます。

こんな長文で結論はそれだけか!?という感じですが、情報収集はやっぱり大事でしたね、ということです!
もし品質管理担当者で本事案をここで初めて見たよ!とか、1月中に発見できなかった!というような方は情報収集の方法を見直してみてはいかがでしょうか?

以上、小橋博士でした!

商品価値の基準とは?

みなさん、こんにちは!小橋博士です!

本日は、商品価値は地域によって異なる、という主旨の記事です。特に首都圏に本社や営業部のある会社は注意していただきたい重要事項です。東京ではダメでも地方では大歓迎の大ヒット商品!その理由とは?

この記事を書くきっかけは少し前にリリースされた「やっぱり茨城が最下位!魅力度ランキングに物申す」を読んだことです。多くの会社に見られる東京基準の価値観に支配されていては、地方に眠る消費者ニーズをとらえきれません。家族構成や人口集積度、それに伴う店舗の構成や密度が地方ごとに大きく異なります。一見効率的なのは東京市場に集中することですが、ライバルも多く、結果的に非効率であることも多いですので、是非これを機会に販売戦略を見つめ直してください。

家族構成が異なる

結論から言うと、地方では東京ではほとんど売れない大容量パックが未だに売れます。これは、統計では捉えきれていない親族の集会の規模や回数等の影響があると考えられます。

子供が好むチェーン店の密度が異なる

子供が好むチェーン店は、およそ地方と呼ばれるところにはほぼありません。ただし、子供が好むというのは日本人としての嗜好が強く反映されているため、ニーズが無いわけではありません。ニーズの密度が薄いだけです。

地方でも生協はある

メーカーにとって重要なのは物流があるかどうかです。この点、生協様は非常にありがたく、地域ごとにネットワークを持っていらっしゃいます。

スーパーなどの小売店に大型パックを在庫して頂くのは正直厳しいですが、生協様であればスポットで導入することはあまり難しくありません。子供が好むような商品構成+選べる大容量+生協様による配送を組み合わせることで、まだまだ地方への販売で利益を上げる余地が十分に残っています。特に、スポット対応であれば物流拠点への配送料も工夫の余地があります。

私はこの発想で、ドーナツの大容量パックの地方販売を大成功させました。多くの消費者から感謝の声も頂きました。視線を変えることで、まだまだ喜んでくださる消費者の方々を増やすことができます。また、それと併せて会社の利益も上げることが出来ます。

ドーナツの大容量パックは東京ではリクエストされて販売させて頂きましたが、ぱっとしませんでした。東京と地方では商品価値の基準が異なる証拠です。東京における商品価値基準にばかり目を向けると、地方ニーズを取りこぼすのではないでしょうか?是非柔軟な発想で販路開拓に取り組んでください。

以上、小橋博士でした!

商品の差別化~新しい視点~

みなさん、こんにちは!小橋博士です!

商品の差別化の際、素材の栄養成分に目を向ける動きが出てきていますね。リコピンが通常の?倍含まれているトマトを使った~~~、のようなものが代表例です。ただ、その差別化では原材料自体の仕入れ値が高騰しますよね。果たしてそれで本当にいいのでしょうか?

個体差・地域差を差別化に取り入れるべし!

まるまる太ったイワシとやせ細ったイワシ、果たしてDHAは同じ量でしょうか?鮮魚部の方は経験的に、脂の乗りが違う、と分かっています。脂の乗りが違うということは、比例してDHAの量も違うということにお気づきでしょうか?

このように、生鮮原材料は個体の特徴に応じて栄養成分が異なることは既に知られていることです。ですが、この個体差を利用した健康成分の差を訴えることは今までまったくといっていいほどされてきませんでした。

食品成分表は、あくまで日本の流通に乗っている同種の原材料の平均値を算出しているにすぎません。このことは、管理栄養士も含めてあまり意識されていません。栄養士を頼っても金太郎飴みたいな回答・提案しかでないのは、学識が浅いからです。学識が浅いとこのような違いに気づけない、そもそも差異があるということを教えられていないからです。

これは非常にもったいないことです。是非、これまでとは異なる差別化の提案ができるよう、研鑽に励んでください。

FQMサポートでは、このような差別化のための相談にも応じています。成分の測定を大量に繰り返してきたからこそ、どのような視点で測定を行えばいいのかがご提案できるのです。

科学的根拠さえつかんでしまえば、あとは通常と同程度の仕入れコストで差別化が謳えるようになります。特に健康成分の特色が謳えると、売上が非常に伸びることは多くの事例から明らかとなっています。是非、ご検討・ご相談ください。

理論原価と実際原価

原価を計算しても机上の空論だ!と言われて困っている方へ。
今回は、理論原価と実際原価の比較です。飲食店の経理を念頭に書いた記事ですが、工場などでも同様の考え方・見方で原価を考える必要があります。

理論原価とは?

理論原価とは、お店の売上に対して本来かかるべき原材料費のことです。より詳細に把握したい場合は、一品当たりにかかる経費全てを含めてかまいません。とはいえ、原材料費以外で計算しやすいものは、お客様お一人当たりで提供する数が決まっている割りばしやお手拭き程度だと思います。野菜や肉など、価格変動のあるものは、平均kg単価を使用します。在庫について使用した繰り越し在庫については、その在庫を仕入れた金額を使って計算してください。月次で計算するケースを想定して、以下に例を示します。
単価=(先月在庫量xその仕入れ値+当月仕入れ額-当月末在庫量xその仕入れ値)÷(先月在庫+当月仕入れ量-当月在庫量)
これを原材料ごとに計算します。
次に、レシピと原材料単価から、メニューごとの平均原材料費を計算します。
最後に、当月のメニューごとの売上数に平均原材料費を掛け、全て足し合わせます。これが当月の理論原価になります。
平均単価を出す工程が少し複雑になりますが、仕入れの管理がしっかりできていて、エクセル等の表計算ソフトに情報入力が済んでいれば毎月シートをコピーして使用するだけで自動で計算が出来るようになります。

実際原価との比較

実際原価は当月に使った原材料費なので、計算は簡単です。在庫の処理はその在庫の仕入れ値を使って行ってください。
一般的に実際原価>理論原価となりやすいです。理由は様々なところでロスが出るからです。
・仕込みロス
・廃棄ロス
・ポーションオーバー
・食材持ち帰り
・まかない
などなどが原因です。原材料ごとに理論原価と実際原価の差が異なることもあります。その場合は日々使用量と在庫のチェックを行うことで、より詳細な原因の究明ができます。この理論原価と実際原価の差の原因の究明こそが、ロスの削減につながります。差の大きいところが削減しやすい部分ですので、集中的に管理してください。理論原価と実際原価の差を従業員に情報開示して、原因の推定と対策を同時に発表することで、目的意識を持った改善行動が促せます。ただし、食材持ち帰りについては例外です。従業員に窃盗の疑いをかけることになりますので、慎重に対応してください。一般的には食材がしっかり管理されている、ロスの原因を探られている、という会社の姿勢が伝わることで、持ち帰りは激減します。

ロス削減の目標は仕入れ額の5%以上

これまで、数字を使ったロス削減策を導入していなかった店舗では、削減目標は仕入れ額の5%以上です。
というのも、これが私たちの実績値だからです。みなさん努力されているにも関わらず、数字管理で徹底的にロス原因の究明を行うとこのくらいの削減は見込めます。仕入れから在庫の管理まで、労力はかかりますが、それに見合う以上の効果です。
是非挑戦してみてください。
エクセルの使用などで効率的な管理をしたいけど、なかなか難しい!という方向けに、店舗の事情に合わせたご支援も実施しております。
挑戦したい方は是非、お声かけください。

メニュー・商品リニューアルに必須!ABC分析とは?

メニュー・商品のリニューアルで必須なこと、それはお店・会社にプラスになる改定を行うことです。言葉にするのは簡単ですが、プラスになるかどうかはどう判断するのでしょう?その基準を明らかにしてくれるのがABC分析とクロスABC分析です。「これはよく出る」「これは面倒だからやめる」などと感覚に頼っていると、売上は維持できても利益率が下がったりと、思わぬ状況になりがちです。勝ち残るためには、苦手なことでも面倒がらずに挑戦していきましょう。

ABC分析とは?

さて、そもそもABC分析とはどんなものでしょうか?基本的な考え方は簡単です。ある基準を元に、上位から並べて、合計で7割を占めるグループをAグループ、7~9割を占めるグループをBグループ、残りをCグループとします。売上の多い順にメニューを並べて、それぞれの売上を足していきます。売上100万円のお店であれば、Aグループの売上合計は約70万です。Bグループは約20万で、AとB合わせて約90万です。また単月の分析ではぶれが大きいので、季節要因なども考慮しながら3か月程度をまとめて分析することをお勧めします。ここまでの分析でCグループが改定の対象になることはなんとなく感じて頂いていると思いますが、メニュー改定はそう単純ではありません。それに、ここまでであれば直感で「これは出てる、あれは出てない」と分類するのと大差ないですよね。直感とは異なるのはこの先の、クロスABC分析を行うことです。

クロスABC分析とは、売上以外にも別の基準でABC分析を行うことです。そして、2パターンのABC分析の結果をグループ分けします。もう一つの基準は、基本的には粗利高になります。そして、それぞれのメニューごとに売上のABCと粗利高のABCの記号を書きます。

分析の結果を検討しましょう
AAとなるメニューは優秀ですよね。磨きをかけることで更に利益に貢献します。販売数自体も多いなら、提供時間短縮の対象にも最適です。

CA(売上は低いが粗利は大きい)になったメニューは、売れればお店にとっては非常にうれしいメニューです。どうしたら販売数が伸びるのか、積極的に工夫をすることが望まれます。

AC(売上は大きいが粗利は小さい)になったメニューはお客様にとってはお値打ちの商品です。この場合の考え方は主に2通りになります。

・お店のコンセプト上、存在意義が薄く、粗利以外にも専用食材の存在・提供時間など、お店の負担になっている場合

売れてはいるものの、経営上は負担にしかなっていないです。思い切って削ることで、お店全体のサービス向上を図りましょう。

・意味のある商品の場合

集客用と位置付けてあるメニューならば、そのままにしておいても問題ありません。それでも売上Aに分類されるということは、数量は多く出ているはずです。ロスや提供時間の改善を行う候補にはなりますので、しっかり育てましょう。ただし、メニュー自体は必要でも、原価計算の間違いなどで意図せず粗利が低い場合は対応が必要です。適正な粗利が頂けるよう、値上げを検討してください。この対応は必須です。というのも、お店のコンセプトにない安売りを行ってしまうことは、客層の変化を起こすなど悪影響をまねくからです。

CC(売上も粗利も小さい)になったメニューは基本的にACと同じ対応です。意味がある商品であれば適切な告知が必要です。いわゆる松竹梅の松に当たる商品であれば、平均客単価の上昇に貢献します。その場合は、専用食材の排除など、過度なお店への負担を減らす検討が求められます。

以上のように、メニューのリニューアルだけでなく、オペレーションなどの改善対象の選択にもクロスABC分析は役立ちます。必ず経営の武器になりますので挑戦してください。

開発費用はおいくら?

メニューをはじめ、何かを開発するときの費用対効果の検証をしているところは大手を除きほとんどありません。効果の検証はアンケートなども活用しないと難しいことと、そもそも開発費用自体、把握できていない場合がほとんどです。適正な開発ペースと値付け、目標品質を考えるためにも、メニュー開発費用について考えてみましょう。

まずは人件費・材料費から!

普段の原価率計算以上に詳細に把握することは現実的ではないですよね。ということで、人件費と材料費をきちんと出しましょう!
同時に何品も開発する場合は、人件費が出しにくい場合があるとは思います。その場合は使った時間を品目数で割ってもかまわないので、いったいいくら使ったのか、おおよそでも数字を出すことが大切です。

設備投資はしたのか?

開発するメニューによっては、新しい調理器具を導入する必要もありますよね。この場合は人件費・材料費だけでなく、設備投資も必要になります。この様なメニューの場合は設備投資額もきちんと分かりやすく記録しておくことが大切です。

新メニューの費用対効果は?

メニュー開発の方向性があっているのか、開発費用と新メニューの粗利を比較してみましょう。この際に、新メニューでしか使用しておらず、ロスになった食材分の金額は粗利から引きます。飲食店においてはこの額はほとんど発生しないはずですが、気合を入れすぎると思わぬロスが発生することもありますので、きちんと調べてください。新メニューの性格上、常連さんに飽きさせない等の役割もあるため、粗利が開発費用ととんとんであるならまずまず目的は果たしたと評価できますね。
とはいえ、全体の売上のうち、新メニューが占める割合が大きすぎる場合は注意が必要です。メニュー全体のリニューアルも選択肢に入れつつ、戦略を考え直す必要があります。

新メニューの開発だけがメニュー開発なのか?

結構見かけるのが、メニュー開発=新メニューの創出という思い込みです。
提供スピード改善のための調理法開発、看板メニューのブラッシュアップなども全てメニュー開発です。
これらの既存メニューの改善開発の場合は、単に粗利と比較すればいいわけではありません。開発目的を達成できたのか?その費用はいくらだったのか?適切に比較してください。

斬新なメニューは飽きやすい

これまで数百品ほどメニュー開発をしてきましたが、その経験上、斬新なメニューは飽きられやすいです。
圧力釜や電子レンジなど、比較的近年開発された調理法もありますが、それでも全世界で数億人が料理を毎日毎日しています。料理を楽しむ余裕のある人・プロの料理人に絞っても相当な人数でしょう。定番は、そのような毎日何百万何千万と繰り返される料理の中で生き残ってきたものです。斬新と感じられるものの多くは、既に誰かが試して生き残れなかったものがほとんどを占めるのも、上記事実を考えれば納得いただけるのではないでしょうか?そもそも斬新とは、言葉を変えると奇抜ともいえるのです。
一方で、斬新なメニューは情報も少なく、開発コストはかさみがちです。
もちろん、お客様にとってのインパクトも大きくなるメリットはあります。
往々にして自信作と言われるものは斬新=奇抜なものになりがちです。そのような料理に対する評価は「おもしろい」「おいしい」などポジティブなものが多くなりがちなのも要注意です。試作品の評価をしてもらう時には、言葉だけでなくたべっぷりなど、いつも以上に細部にわたって観察することが大切です。
料理人にとっては、斬新なメニュー開発が楽しいのも事実ですし、ヒットを夢見られるという点でも、やりがいを感じられるのは間違いないです。とはいえ、経営者としてはこのような傾向を、きちんと把握しておくことは必須だと考えます。

低糖質の次は何?

商品開発をしていると、流行を先取りしたい!と感じることが多いですよね。今の食品業界ではスーパーフードや低糖質がキーワードになっていますが、スーパーフードはそろそろ弾切れ、低糖質は既にあふれてしまってさほど差別化が出来なくなってきています。

そこで今回は少し視点を変えて、新しい栄養学である時間栄養学を新メニューのコンセプトにするご提案です。
低糖質ほど強烈なパンチはありませんが、朝メニューや夜メニューで特徴のあるものを売り込む助けになると考えられます。

時間栄養学って何?

簡単に言ってしまうと、朝昼晩それぞれどんな献立がお勧めなのか、研究する学問です。時間栄養学を研究されている方には怒られそうですが、将来的に日本人の食事摂取基準に取り込まれる時にはそういう表現になるはずです。というのも、食事は朝昼晩がメインですので。
これまでも、朝ご飯はしっかり食べよう!みたいなことはありましたが、時間栄養学はもっと細かい話になります。
どれくらい新しくて、どれくらい信頼性があるのか、というと、2015年度に厚生労働省が栄養指導の基本書である「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を発表しましたが、こちらに時間栄養学の考え方がようやく取り入れられ始めたところです(参考:時間栄養学研究会 ご挨拶)。策定検討会では論点に「時間栄養学」という単語も直接登場しているほどです(参照:第1回「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会論点整理)。
ということで、今後の食事指導に取り入れられていく考え方であるのはほぼ間違いないです。

具体的に何がお勧めなの?

時間栄養学はまだまだ発展中の学問ですので常に最新情報に耳をとがらせておく必要がありますが、2016年8月現在では以下のことがお勧めされています。

・朝食をきちんと食べること(朝食抜きは肥満の傾向を強めます。朝食を摂ることで学習・運動・やる気などのパフォーマンスがよくなる傾向があります。)

・夜に食べ過ぎない(摂取カロリーが夜に偏るほど、肥満の傾向が強くなります。)

・朝食でタンパク質を摂ること

今の時点では主に朝食メニューでいわゆる「重め」なものをお勧めする根拠になるのが時間栄養学、ということになりそうです。

また個別の栄養素でも研究が進んでおり、先日カゴメ株式会社から朝にトマトジュースを飲むとリコピン(抗酸化物質として脚光を集めたトマトのファイトケミカルですね!)の吸収がよい、というニュースリリースもありました(参照:株式会社カゴメニュースリリース

是非朝食メニューの開発と販促にお役立てください!