食品製造の品質管理のポイント

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

前回の記事は、改善案の実行には人のマネージメントが不可欠、という内容でした。今回の記事はそもそも改善案の立案に不可欠なポイントです!問題があることは認識していても、どのように改善への糸口をつかむのか、ここがわからないと始まらないですよね。
改善策立案と実行の二つが合わさることで、ようやく改善できます。品質管理は大変ですが、成功すれば喜びもひとしお!ということで、今回と前回の記事が皆さんの参考になれば幸いです。

食品製造業の特徴

食品製造業の特徴は、鍋釜一つあれば始められる、と言われるほどの敷居の低さにあります。食品製造業の創業者で製造ラインのエンジニアや食品関連の研究者出身の方は本当にごく少数です。これに起因して、工業化・大規模化の訓練を受けた人材が所属している割合も非常に少ないようです。

また、社会的な要請から、品質管理=衛生管理となりがちなことも特徴の一つです。随所で数値管理はしているのですが、そもそも統計的な品質管理と衛生管理は別物ですので、衛生管理が専門の方が統計的品質管理に挑戦しているという話はあまり聞きません。

以上から、食品製造業では、衛生管理担当者がいても、よほど大規模な工場でない限り、品質を管理し改善していく担当者がいることは非常にまれです。その結果として、ムリ・ムダ・ムラだけでなく、管理上の不備が放置されていることが多いようです。専門家がいないことが多いので、そもそも不備に気づけないという構造的な問題だと感じています。

品質管理のポイントは「測る」ことから!

管理上の不備とは、そもそもばらつきを計測するためのチェック作業がないことを指しています。例えば「パンの発酵がうまくいかない、いつもどおり湿度は70%で温度は30度なのに」という話があったとします。原因はなんでしょうか?

このような問題の原因を探るためには、確認していなかったことを確認して、うまくいくときといかないときの違いを見つけることです。そうです、とにかくばらついているかも?と思ったことを片っ端から測っていくことが品質管理への第一歩になります。

上の例だと
・酵母1gの中に生きているのはどのくらいいるのか?
・材料はしっかり混ざっているか?
・捏ねるときの温度変化はどうか?
・測定した湿度・温度はどこの温度なのか?ムラはないのか?(部屋の温度などは場所によって結構違います)
・原材料の成分は一緒なのか?(このケースだと小麦粉の成分、グルテンの含量などです)
などなど、いろいろ出てきます。それぞれについて、どのようにしたらばらつきを測定できるのかをみんなで考えましょう。思いつかないときは私はじめ専門家の意見を聞いてみるのも有効です。知らないことはいくら頭をひねっても出てこないので。

このようにして、地道に問題ごとに測定すべき事柄を蓄積していきましょう。原因となるばらつきが見つかれば、品質を安定させる「品質管理」への道が開けてくるはずです!ここまでやって、はじめて、稼げる品質管理になれます。道は険しいですがその分やりがいはあります。頑張っていきましょう!

以上、小橋博士でした。

品質管理で大切なのは統計より現場の信頼

こんにちは!小橋博士です。

品質管理の方とお話しすると、「いくら言ってもちゃんとやってくれない」という、悲しい事態をよく耳にします。品質管理担当者と工場の方の意思疎通はなぜ測れないのでしょうか?今回は人の心理とマネージメントという視点で考えて行きます。

「正しいこと」は通用しない

改善案を実行する場合、大抵の場合、誰かの業務が増えます。大げさに言うと、誰かの犠牲のもとに、全体の利益を追求することになる、ともいえます。そして多くの場合、犠牲になる誰かにとって、被害>個人に分配される利益、です。

さらに、お願いに回っている品質管理担当者にとって、改善案の実行(と成功)は個人的な利益が大きいとも思われます。そうです、お願いされる相手にとっては「なんで私があなたのために犠牲にならないといけないのですか?」と思われるのです。

このように、いくら品質管理担当者がひたすら会社のことを思って統計的に「正しいこと」を言っても、個人的な信頼関係なくして改善案はうまくいきにくいのです(若い会社で誰も気づいていないことであればスムーズに行きますよ!でもそれは例外といえるくらい、改善案はスムーズに行かないのです)。

小さな改善実現で信頼を!

個人的信頼関係といっても、品質管理担当者になる方々は大抵生まじめで、元気で快活な営業さんのように飲みニケーションで信頼関係を築くのは難しい方が多いですよね。ではどのように信頼関係を構築したらいいのでしょうか?

それは、改善に関わる方全員が、提案者に関わることによってメリットを受けられるようにすることです。この際、会社の利益があがればいずれ還元される、という大きい話ではだめです。仕事が楽になった、仕事が楽しくなった、という目の前のことでなければ共感は得られません。

このように理想を掲げるのは楽ちんで、実行するのは難しいですよね。ですが、結局は心構えの問題です。みんなに気持ちよく仕事をしてほしい、そのためにはどうしたらいいのか?機会を逃さず現場の方とコミュニケーションをとって誰がどのような価値観を持って仕事をしているのか、見極めていくことが大切です。

そして、細かい改善をいとわず、ISO会議なども利用して作業の負担軽減に努めていきましょう。細かいことは、軋轢が生まれにくく、改善の実行も容易なことが多いです。そのようなところからコツコツ作業者の方の利益を実現して信頼を得ていくことが、数字に表れるような大きな改善の実行へのステップになります。

千里の道も一歩から!特に若い品質管理担当者の方には、焦らず作業者個人に目を向けた小さな改善に地道に取り組んでいっていただきたいです。
大きな改善への道筋は、なかなか遠いのですが地道に頑張りましょう。

以上、小橋博士でした!

ダブルチェックのポイント

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

今日はダブルチェックのポイントについて記事にします。
・単純な複数回チェックはしない
・現場の負荷を減らすチェック方法を考える
が要旨になります。

複数回チェックは避けよう!

この理由は単純です。単に効果がほとんどないからです。
現在の生産システムでは、どれだけ大手であっても製品不具合を100%防ぐことは現実的ではありません。そして不具合が発生するたびに、取引先からは改善策の提示を求められます。この際、品質管理部門が思考停止してダブルチェックします!というのは実効性が低いことはみなさん肌で感じていらっしゃると思います。

そもそも、チェック担当はある程度信頼のおける方を選んでいるはずです。現場での評価も同様でしょう。このようなケースで同じことを2回チェックするような単純なダブルチェックは機能するでしょうか?「~さんがチェックしたし、実際ほとんど不具合なんて無いから大丈夫」と気が緩みがち・・・すなわち、単純なダブルチェックの効果は限りなく低いです。

加えて、そのようなタイミングでの直接的なチェックの導入は、現場にペナルティとしてやらされている感がでやすいようです。このようなペナルティ感のあるチェックの場合、現場はあまりまじめに続けてくれません。特に人手が足りない昨今の工場事情では、新しく決めたチェックをする代わりに、過去に導入したチェックがおろそかになりがちです。

既存の管理データを活用しよう!

多くの場合、既存の管理データの解釈で不具合発生の予兆が発見できます。生産管理データの解釈によって、チェック漏れの防止や不具合発生の予兆を発見できないか、議論してみてください。私がコンサルティングに加わった事案では、10件中9件は既存の生産管理データ等の解釈によって実質的なダブルチェックが行えました。こうすることで、現場の負担が減り、必要なチェックに集中しやすくなります。結果的に不具合発生を未然に防ぐことにつながりました。

解釈の追加は生産管理部門の腕の見せ所であるとともに、専門的知識を要求される部分でもあります。なかなか思うように行かない場合は是非FQMサポートの無料相談をご利用ください。多くの場合、無料相談+ミラサポの専門家派遣の範囲内で、金銭的ご負担を頂くことなく解決できます。

以上、小橋博士でした!

報告しやすい環境を作ろう

こんにちは!小橋博士です。※この記事は2016年9月12日に執筆されたものです。

品質管理に限らず、改善活動を行う上では「報告しやすい環境」はとても重要です。
特に食品会社は中小規模の会社が多く、社長の一喝ですべてが台無しということも・・・。
~が悪かったからこうしました、というよりは、やはりよりよいところを目指しているという表現が重要になります。

そこで、是非私の推奨しているグレーゾーン管理を取り入れていただきたいと考えています。
従来の合否式の管理ですと、不合格の製品がでた、という報告は非常にしにくいはずです。
結果として、測定のルールが歪んでいき、どうしたら合格品として測定できるのか?という本末転倒な体制になっていきます。
合否ラインよりも少し厳しい値で、出荷はできるけれど従来の不良品が出た際の改善スキームを行わないといけないラインを設定するのがグレーゾーン管理です。会社によってはグレーゾーンという言葉もよろしくないでしょう。その際はグレーゾーンを良品、文句なく合格のラインは優良品などと表現を工夫しましょう。

とにかく、報告がされて、改善が始動することがとても大切です。

グレーゾーン管理の基礎的な考え方はミラサポからご依頼いただければ、御社の費用負担は発生しません。私の方には国の補助金から旅費や既定の日当が支払われますので、お気軽にご依頼ください。

以上、小橋博士でした!

衛生管理~TV撮影等の対応

みなさん、こんにちは!小橋博士です。※この記事は2016年3月21日に執筆されたものです。

いろいろな企業の革新的な取り組みを紹介する番組は見ていてわくわくしますよね!
私も好きでよく見ているのですが、とても残念なことがあります。
それはCCP以降と思われる工程で製品を素手で触っていると思われる映像が多いことです。

TV用ということで、普段と違う状況になっていることもあるかもしれません。
その製品はもしかしたら、TV撮影用に(リ)パックシーンを撮影した後に廃棄するのかもしれません。
ただ、映像として最新の衛生管理の元~~~~という感じで放映されるならば、衛生管理もしっかりされるべきかと思います。

TV撮影であろうと他のイベントであろうと、やはりいつも基本に忠実に、例外を作らない、ということが普段の安定操業と食の安心・安全につながると思います。
HACCP義務化の方向性が打ち出されたことですし、この機会に見直してみませんか?ご要望があれば私も見直しに参加させて頂きます!

以上、小橋博士でした!

統計調査の前提にご注意を!

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

今日はお問い合わせいただいた中でちらほら散見する事例「統計」についてです。
具体的な内容は今推敲中ですが、一言注意点を・・・。

一見統計的に処理しているように見える結果でも、処理方法が適切でなければ結果が変わります。
また、元にしているデータ自体が偏っている場合、処理方法が適切でも結果は異なります。

意見が割れている例として、血圧が高いと死亡率が上がるという医者と下がるという医者がいるというのもあります。こちらについてはデータが偏っているせいではないか?という指摘がなされています。

どうも人によって主張が異なる、という場合は処理方法やデータの偏りにご注意ください。
また、アンケートによって消費者の嗜好を調査する場合も、質問の内容によっては(というより、かなり注意して質問を設定しないと)データの偏りが生じることが知られています。
統計的に~~~~ということが明らかになりました!というのは非常に説得力があるゆえに、注意が必要ですよね。

以上小橋博士でした。

品質管理目標~工程ごとの品質基準の最適化~

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

今日は品質基準のお話です。
みなさんの工場でも工程ごとに色・形・重さなどの基準が存在していると思います。
この中で重さは基本的に誰が測っても同じ、且つ、10g以上12g以下が合格、という基準で判断に迷う従業員はまずいらっしゃらないと思います。では色・形はどうでしょうか?
色の場合は色彩空間であらわされ、訓練すれば識別可能になると思いますが、全従業員に徹底するのはなかなか難しいですよね。さらに、色ムラもあるため、何%がどの範囲に入っていればいいのか、正確に判定する基準を作って誰にでもすぐ分かるように掲示することはかなり難しいです。
形はもっと質が悪いです。チョコレートのように、判別が容易と思われるものもありますが、一般的な食品ではそうもいきません。イケメンとブサメンの境目や判断基準を誰でも分かるように明確にすることが難しいのに似ていますよね。どうしても曖昧な部分が残ります。
食感・味等についても同様に、なかなか人間が判断するのは難しいです。

中小の工場では、そのような基準を作業員が判定しているケースが非常に多いです。すると、合否のあやふやな個体は各工程で人の手を止める要因になってしまいがちです。詳細はここでは申し上げられないのですが、結果として、専業の判定員を上流の工程に配置して、そこでの基準を従来より厳しくすることによってロスは同程度に抑えつつ、全体の作業時間の短縮につながったケースもあります。

中小の工場での品質基準は、どうしても場当たり的に積み上げられて言ってしまうケースが多いです。品質基準があることで、実際に人と物がどのように動いているのか、観察してみてください。気持ちよく作業して頂くためのヒントが隠れているかもしれませんよ?

また、全工程で同様のチェックをするよりも、基準の与える影響がより明確になります。より多くの製品(仕掛品)を基準内にするにはどうしたらいいのか?を考えるうえでも役に立ちます。

以上、小橋博士でした!

品質管理は目的を明確に!

こんにちは!小橋博士です。

食品工場での品質管理部門で一番の問題は「品質監視」部門になっていることではないでしょうか?
もちろん、一定の品質を維持していることを確認するのは非常に重要です。
しかし、監視だけでいい、となると途端に進歩が止まってしまうことが多いと感じています。

会社としての課題に一緒に挑戦してこそ、やりがいと私も含めてみなさんの成長につながっていくはずです!
ということで、営業・新商品開発で私が感じた品質管理部が貢献できるポイントを少し挙げてみます!

対象→テーマ→解決することで得られる成果例という感じで列挙します。

賞味期限の短いもの→どうやったら賞味期限が延長できるか→売り込み先の拡大
生産を急ぐ必要があるもの→生産指示から完了までの時間短縮→物流の改善
形状のばらつきが激しいもの→どうやったら均質にできるか→ロスの低減
作業工程の長いもの→仕掛品の保存方法改善or開発→生産効率の向上及び新商品開発の可能性拡大

ちょっと抽象的なのでわかりにくいと思います。後日具体例を交えてブログに書き込みたいと思います。
営業部や商品開発部とコミュニケーションをとって課題=目的を明確にすることで、品質管理は多方面に貢献していける部署に変わります!

品質改善事例 科学的知識を活用した事例

皆様こんにちは!小橋博士です。

 品質改善事例を紹介して欲しいというご要望もしばしば頂きますのでご紹介させていただきます。
今回は油で揚げたものが油っこくならないようにしたい、とのご要望にお答えした事例です。

 そもそも、油がしみこむのは2つのパターンがあります。
・スポンジのように吸い込むパターン
・元々あった水分と入れ替わるようにしみこむパターン

 食品製造の現場では米菓など一部を除いて後者が多いと思われます。この場合、水が入れ替わりにくくすれば油のしみこみが抑えられることになります。つまり、保水性の高い原材料を使うべき、となります。フライですので高次構造(繊維の畳み方などのことです)が必要な素材はNG。さらに天然素材ということでご要望がありましたので・・・結局候補を挙げてバッターへの配合比率を調整することで油のしみこみを抑制することに成功しました。

 食品に含まれる分子がどのように振る舞うことで問題が発生しているのかを考察することで、研究開発の方向性を示せることが博士ならではのポイントです。

 場合によっては飛散する材料では使いにくい、、など違う面での問題も発生することもあります。そういうケースの事例も蓄積がありますので是非無料相談をご利用いただければと思います。

まずは基礎(3S)から

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

 私が良く尋ねられるのは「品質向上にはまず何からしたらいいですか?」ということです。
その際にお答えするのは「3Sの徹底」です。いろいろな考え方・見方があるのですが、3Sを通じて2つのことを実現して欲しいのです。その2つとは・・・

・見える化
・コミュニケーションの向上

です。この2つは3Sだけでなく、会社のあらゆる改善活動で必要なことですよね。ですので、特定の少数の人によって働きやすさ100点の環境を実現するよりも、より多くの人が見える化とコミュニケーションを意識して作り上げた90点の環境の方が価値がある、とすら思います。

 品質管理が目指すのは持続的な品質向上であって整理整頓されて清潔な職場はその一部です。品質向上のためにも「見える化」と「コミュニケーションの向上」の2つはかかせません。イノベーションの種は関わる人が多いほうが生まれやすいからです。この2つを向上させるきっかけにふさわしいのが3S活動なのです。というのも整理整頓清掃に関しては学歴などはあまり関係なく、その気になれば大部分の人がなんらかのアイデアを出せるからです。私も工場勤務の時は「あんた頭はいいのに、こういうのは苦手なのねぇ~」などとよくからかわれながら皆さんのアイデアを頂いたものでした。

 全員に参加して頂くのは非常に難しい面もあります。ただ、やはり会社の空気というのはあるもので、少しずつ参加者が増えていくと広がっていきます。また、社長へのプレゼンテーションも3S(5S)は大事です!では通らないことがほとんどだと思いますので、全員参加の品質改善活動の練習というか空気づくりのためにやります!という点で押してみてはいかがでしょうか?

 3S活動の具体的な進め方は会社の規模や雰囲気によりますので、詳細ご希望の方は是非メールでお問い合わせいただければと思います。