食品の在庫管理はどのようにやるとスムーズにできるでしょうか?このようなお問い合わせを飲食店などの経営者の方から頂くことがあります。これについては、そもそも品切れをどうとらえるか?という問題に答えを出さないといけません。
看板メニュー以外の品切れは許容しましょう
個人のお店が大手と同等の戦略をとることは得策ではありません。日本のコンビニなどは品切れを起こすことは最大のタブーとされていますが、個人店では品切れ上等でいくべきです。
ただし、看板メニューの品切れは極力避けてください。特にきちんと看板メニューの打ち出しをしているお店では注意すべき点です。というのも、新規のお客様はその看板メニューに惹かれてやってきているからです。
看板メニュー以外については、「すみません、今日はもう~~~は終わっちゃんたんです」でも特に問題はありません。きちんと差別化してアピールできているなら、そもそも看板以外のメニューは店内で初めて知るケースがほとんどです。それに、上記のフレーズは、何十年も続くような繁盛店であってもよく聞きます。そして代わりのメニューをお勧めして頂けることも多いですよね。
とはいえ、焼き鳥屋に入ったのに、焼き鳥が手羽先しかない、という事態に遭遇したらどう感じるでしょうか?閉店間近であれば、仕方ないと感じるかもしれませんが、開店直後だとさすがに・・・、と感じますよね。大事なのは選択の余地が残っていることです。
過剰な在庫は避ける
過剰な在庫は鮮度の低下を招くだけではありません。あまり指摘されないことですが、過剰、つまり普段以上の在庫を抱えるということは、店内のスペースの使い方が変わるということでもあります。普段と違う事態は必ず作業性の低下をもたらします。正確性も下がります。少し価格差が生じるからと言ってすぐに買いだめに走るような行為は、他の部分でロスが出がちです。お店のコンセプトを思い出してください。その実現に、適正な在庫量はどの程度でしょうか?コンセプトを重視した場合、多くのお店で過剰在庫がNGであることは明らかです。過剰な在庫は避けましょう。ちなみに、冷凍食品であっても品質の低下は起こります。詳細は長くなるうえに物理の話まで出てきてしまうので省きます。冷凍食品は食材全体の在庫量調整には便利なのですが、少しでも高品質な料理を提供するためには、必要最低限の在庫を心掛けるべきです。
発注間隔と在庫量を決めておく
全ての作業が自動的に決定できるくらい、システム化が進んでいればいいのですが、大手のフランチャイズに加入でもしていない限り、難しいことですよね。オーダーから計算するのもいいのですが、現実にはロスや計算間違いなども発生します。そこで、経験的な感覚で構わないので、食材ごとに発注間隔と在庫量を決めておきましょう。その際に、予想発注量と店長への報告をお願いする過大・過少発注量を決めておきます。在庫の管理は店長の責任ではありますが、食材の利用が予想を外れていて発注量が多すぎたり少なすぎる場合は教えてもらうようにしましょう。また、調理担当にも報告をお願いする最低在庫量は設定しておくべきです。店長も人の子です。ミスはつきものですので、お店全体でフォローできる仕組みを組み込んでおくことをお勧めします。
品切れの時の対応を決めておく
品切れを許容した場合、前述の最低在庫量を低めに設定できます。これは食材の鮮度が向上することも意味します。社会問題として一部に関心のあるフードロス対策にもなるため、お店のコンセプトによっては逆にウリのひとつになるでしょう。ただし、冷たく「本日は終了しました」だけでは、また来店しようという気持ちはそがれてしまいます。品切れした場合のお詫びの仕方、代わりのメニューをお勧めすることなどは必要でしょう。その際、鮮度を意識していることが伝わるようにお勧めすることもポイントです。品切れ=お店の在庫管理が出来てない・お店の都合、というよりも、品切れ=常に新鮮なものが提供されている、など、ポジティブに伝わるように注意しましょう。とはいえ、全てのメニューで品切れが許容できるわけではありません。看板料理の品切れはフォローできない顧客離れにつながりかねません。お客様がその料理を食べるために来店されているのに、無い、では済まないということです。あくまで許容できるのは、看板以外の飽きさせないためのメニュー群です。また、品切れだらけになることも極力避けるべきです。お店の方針で当日使い切りを目指すのであれば、閉店時間を「ただし、品切れになり次第閉店」という、スープがなくなり次第閉店のラーメン店のように付け加えておくべきでしょう。欠品が増えてきたら、入店時にその胸をアナウンスすることも必要です。
食材の先入先出は徹底する
発注のルールを決めるのは、在庫金額を適正に保つためでもありますが、鮮度管理のためでもあります。食材の先入先出、つまり、古いものから先に使う、というのを徹底することも大切です。どうせ食材の管理はしなければいけないことです。是非お客様に喜んでいただけるよう、食材は先入先出を徹底し、常に新鮮なものを使えるようにしましょう。