食材在庫の管理

食品の在庫管理はどのようにやるとスムーズにできるでしょうか?このようなお問い合わせを飲食店などの経営者の方から頂くことがあります。これについては、そもそも品切れをどうとらえるか?という問題に答えを出さないといけません。

看板メニュー以外の品切れは許容しましょう

個人のお店が大手と同等の戦略をとることは得策ではありません。日本のコンビニなどは品切れを起こすことは最大のタブーとされていますが、個人店では品切れ上等でいくべきです。

ただし、看板メニューの品切れは極力避けてください。特にきちんと看板メニューの打ち出しをしているお店では注意すべき点です。というのも、新規のお客様はその看板メニューに惹かれてやってきているからです。

看板メニュー以外については、「すみません、今日はもう~~~は終わっちゃんたんです」でも特に問題はありません。きちんと差別化してアピールできているなら、そもそも看板以外のメニューは店内で初めて知るケースがほとんどです。それに、上記のフレーズは、何十年も続くような繁盛店であってもよく聞きます。そして代わりのメニューをお勧めして頂けることも多いですよね。

とはいえ、焼き鳥屋に入ったのに、焼き鳥が手羽先しかない、という事態に遭遇したらどう感じるでしょうか?閉店間近であれば、仕方ないと感じるかもしれませんが、開店直後だとさすがに・・・、と感じますよね。大事なのは選択の余地が残っていることです。

過剰な在庫は避ける

過剰な在庫は鮮度の低下を招くだけではありません。あまり指摘されないことですが、過剰、つまり普段以上の在庫を抱えるということは、店内のスペースの使い方が変わるということでもあります。普段と違う事態は必ず作業性の低下をもたらします。正確性も下がります。少し価格差が生じるからと言ってすぐに買いだめに走るような行為は、他の部分でロスが出がちです。お店のコンセプトを思い出してください。その実現に、適正な在庫量はどの程度でしょうか?コンセプトを重視した場合、多くのお店で過剰在庫がNGであることは明らかです。過剰な在庫は避けましょう。ちなみに、冷凍食品であっても品質の低下は起こります。詳細は長くなるうえに物理の話まで出てきてしまうので省きます。冷凍食品は食材全体の在庫量調整には便利なのですが、少しでも高品質な料理を提供するためには、必要最低限の在庫を心掛けるべきです。

発注間隔と在庫量を決めておく

全ての作業が自動的に決定できるくらい、システム化が進んでいればいいのですが、大手のフランチャイズに加入でもしていない限り、難しいことですよね。オーダーから計算するのもいいのですが、現実にはロスや計算間違いなども発生します。そこで、経験的な感覚で構わないので、食材ごとに発注間隔と在庫量を決めておきましょう。その際に、予想発注量と店長への報告をお願いする過大・過少発注量を決めておきます。在庫の管理は店長の責任ではありますが、食材の利用が予想を外れていて発注量が多すぎたり少なすぎる場合は教えてもらうようにしましょう。また、調理担当にも報告をお願いする最低在庫量は設定しておくべきです。店長も人の子です。ミスはつきものですので、お店全体でフォローできる仕組みを組み込んでおくことをお勧めします。

品切れの時の対応を決めておく

品切れを許容した場合、前述の最低在庫量を低めに設定できます。これは食材の鮮度が向上することも意味します。社会問題として一部に関心のあるフードロス対策にもなるため、お店のコンセプトによっては逆にウリのひとつになるでしょう。ただし、冷たく「本日は終了しました」だけでは、また来店しようという気持ちはそがれてしまいます。品切れした場合のお詫びの仕方、代わりのメニューをお勧めすることなどは必要でしょう。その際、鮮度を意識していることが伝わるようにお勧めすることもポイントです。品切れ=お店の在庫管理が出来てない・お店の都合、というよりも、品切れ=常に新鮮なものが提供されている、など、ポジティブに伝わるように注意しましょう。とはいえ、全てのメニューで品切れが許容できるわけではありません。看板料理の品切れはフォローできない顧客離れにつながりかねません。お客様がその料理を食べるために来店されているのに、無い、では済まないということです。あくまで許容できるのは、看板以外の飽きさせないためのメニュー群です。また、品切れだらけになることも極力避けるべきです。お店の方針で当日使い切りを目指すのであれば、閉店時間を「ただし、品切れになり次第閉店」という、スープがなくなり次第閉店のラーメン店のように付け加えておくべきでしょう。欠品が増えてきたら、入店時にその胸をアナウンスすることも必要です。

食材の先入先出は徹底する

発注のルールを決めるのは、在庫金額を適正に保つためでもありますが、鮮度管理のためでもあります。食材の先入先出、つまり、古いものから先に使う、というのを徹底することも大切です。どうせ食材の管理はしなければいけないことです。是非お客様に喜んでいただけるよう、食材は先入先出を徹底し、常に新鮮なものを使えるようにしましょう。

栄養成分表示をするために必要なこと

栄養成分表示をするために必要なことは何でしょうか?当たり前のようですが、栄養成分表示をするためには、原材料それぞれの使用量をきちんと決めることが必要です。

今日はにらが高くてニンジンが安いから、ニンジンを多めにしよう、というのはありえません。
レシピさえ確定していれば比較的簡単に栄養成分表示を行うことは可能です。
何より、レシピを確定することは繁盛にもつながる大切なことです。本日は栄養成分表示に必要なことと、なぜそれが繁盛につながるのか、考えていきます。

栄養成分表示は必要?

栄養成分表示を望む消費者の声はそれなりに大きいにもかかわらず、個人店などではほぼ表示は見かけません。ですが、近い将来どこかで確実に表示義務化に向けて動き始めます。実際に、これまで何度も飲食店での栄養成分表示について話し合いがされてきています。ということで、個人店では栄養成分表示は義務ではないものの、実際に表示を行うには相応の時間が必要になるため、栄養成分表示のために必要なことは把握しておくべきです。また、包装済みの商品については2020年に表示が義務化されます。

栄養成分表示に必要なこととは?

具体的にはレシピと、それを忠実に守れる職場環境が必要です。
レシピは比較的短期間で準備できますが、職場環境は一種の文化ですので、それなりの時間はかかります。
今の職場環境にもよりますが、準備期間が必要であることを考えると、栄養成分表示に備えて準備しておくこと、が必要なことと言えるでしょう。

また、検査機関に出して栄養成分値を実験的に求める場合は1サンプル当たり5万ほどかかります。あまり突っ込まれることはないのですが、原材料の産地や季節ごとの変動を考えると、法令順守の視点では複数回行う必要があります。元研究職の私から見ると非常にナンセンスな出費です(理由について知りたい場合はお問い合わせください)。よほど大量に生産するものでないかぎり、標準成分表からの計算値で十分です。

栄養成分表示の準備が繁盛につながる理由

一言でいうと、ポーション管理の徹底につきます。
また、付随的に、従業員の意識が良い方向に向くこともあげられます。
ポーション管理は元々はコスト管理のための手法ですが、お客様の満足度を常に一定に保つ効果もあります。
ポーション管理が出来ていないと、食事の品質がばらつき、悪い時の印象はいい時の2倍のインパクトを持つ、という心理学的傾向から、お客様が離れる原因となることが知られています。
このように、コスト管理の徹底から派生するお店のクオリティ向上効果と、お客様の満足度を一定に保つ効果から、栄養成分表示をにらんでレシピの徹底を図ることは繁盛につながるのです。

栄養成分自体はよくわからないけど、レシピ徹底なら出来る!という店主様も多いと思います。
是非、レシピの徹底を行ってみてください。

DMは有効か?

DMによる告知はどの程度有効か?というお問い合わせを受けましたので、以前調査した結果をまとめます。
工場の品質管理だけではなく、このようなお問い合わせにつきましても調査のノウハウを活かしてお答えできますので、たまたまこの記事をご覧になった悩めるそこのあなた!も是非無料相談をご活用くださいませ。

参考にしたのは以下の資料です。
・日本政策金融公庫 経営Q&A 売り上げアップにつながるチラシ・DM作成術(2009年2月)
・JDMA 一般社団法人日本ダイレクトメール協会 DMメディア実態調査 2015 ←こちらは名前が長いので以降DM協会と略称を使用します。

DMの開封率とレスポンス率

DMの本質はお知らせです。お知らせである以上、見てもらわないことには始まりません。そこで大切なのは開封してもらえたか?そのあと行動を起こしてもらえたか?の2点です。

まずは開封率から。開封率は開封して読むことまでを含みます。
ハガキ等郵便で送付するもの 80.9% (2015年DM協会調べ)
電子メール   PC受信  63.6% (2008年株式会社アイシェア調べ 対象:同社会員)
電子メール   携帯受信  61.6% (2008年株式会社アイシェア調べ 対象:同社会員)
意外と目は通してくれているのですね。ただし、電子メールのデータは元々メール転送サービス利用者限定で母集団が著しく偏っている上に古いデータですので、あくまで参考程度にしてください。ともあれ、過半数は目を通してくれると考えていいでしょう。

次にレスポンス率。これはDMを受けて何か行動を起こしてくれた人の割合です。2015年のDM協会による調査以前は、ネットで調べる、話題にする、など間接的な行動はレスポンス率に含めていなかったようです。
レスポンス率は日本政策金融公庫・DM協会ともに、古い定義で平均5%程度のようです。間接的な行動を含めると約15%まで上昇します。こちらの率は送付した人全体に対する割合なので、電子メール経由だと若干落ちることが予想されます。とはいえ、郵送は既存顧客向けが多く、電子メールは不特定多数向けが多いことが予想される(データには示されていない)ので、媒体問わず以下の数値が参考になりそうです。
平均的なレスポンス率
DM・チラシ(不特定多数) 0.5~1.0%
DM・チラシ(既存顧客)  5.0~15.0%

ただし、これには重大な視点が抜けています。自店の商圏向けかどうかです。商圏外にDMを配ったとしてもレスポンス率は著しく低いことは明白です。商圏内の配布対象者が何名で、配布のためのコストがいくらで、予想される売上がいくらなのか、しっかり予想を立ててDMを活用することが大切です。このように効果を検証しないで「とりあえずチラシ・DMを配布しよう!」というのは広告費の浪費につながりかねません。というよりも、ほぼ確実に浪費するといえるでしょう。既存顧客向けですらざっくり1割程度しか来店を促せないのですから、DMの配布コスト(もちろん、製作費コミですよ!)が一人100円だとすると、一人来店していただくのに10倍の1000円ほどかかる計算になります。商圏外・新規見込み客が入ると予算はさらに膨らみます。直感的にも戦略が必要なのが感じてい頂けるのではないでしょうか?
注意が必要であるとはいえ、これだけのレスポンスが期待できる点は評価すべきでしょう。
是非DM等を有効活用して、売上アップに役立ててください!

以上、小橋博士でした。

交差感染とアレルゲンのコンタミ

衛生管理のレベルアップを図るうえで難しいのは、交差感染とアレルゲンのコンタミに対する教育と徹底です。品質管理担当の経歴が長い方でも、指摘されれば知ってはいるものの、きちんと理解しておられる方は少ないようです。

交差感染とアレルゲンのコンタミって何?

交差感染は主に食中毒菌、コンタミについては主にアレルゲンについて使われる言葉ですが、共通するのは「意図しない混入」であることです。よくあるのは

・違う作業に移る前に行う洗浄が不十分
・作業の途中で生もの・アレルゲンに触ってしまったまま、別の作業を継続

の2点です。食品だと想像しにくいのですが、病原菌等を含む生ものやアレルゲンを含む原材料・仕掛品を青いインクだと思ってください。両者を含まないものは白いインクだとします。青いインクを触った手で白いインクを扱う作業をしたらどうなるでしょうか?青が微量とはいえ、混ざりそうですよね?このような状況が交差感染やアレルゲンのコンタミが発生する状況です。

白色の商品として売りだしたのに、青が混ざったような色だったら、お客様はどう思うでしょうか?クレームの原因になりますよね。交差感染やアレルゲンのコンタミの場合は見た目では分かりませんが、「病気の発症」という形で表れてしまいます。

地道な教育とラインの見直しを!

交差感染とコンタミは非常に大きな問題ですが、食品工場での最大の問題は「ということで、交差感染やコンタミを発生させないように気を付けて作業してください」で終わってしまうところです。

なぜ問題なのでしょうか?

上に例として挙げたインクの事例のように、目に見えるものなら報告がきます。しかし、病原菌もアレルゲンも目には見えません。また、基本的に作業者の知識・意識は欠乏しがちです。実感がないものは話としては聞けても、対応するのは難しいのです。これが、いくら教育を繰り返しても交差感染・コンタミの頻度が減らない理由です。

このような事情から、最大の対策は交差感染・コンタミが発生しないライン運営です。教育においても、最大の力点は「交差感染等を防ぐルールが守りにくかったら報告すること」です。

ここでも、作業者の努力やモラルに依存することはあまり得策ではありません。品質管理のレベルアップのためには、仕組みそのものを改善していくことがもっとも有効です。

それでも交差感染やコンタミが起こってしまうんです!みんな気を付けているはずなのに・・・というお悩みをお持ちの担当者様は是非、メールでお問い合わせください。工場を拝見すればすぐに原因特定できますので。

以上、小橋博士でした。

低糖質の次は何?

商品開発をしていると、流行を先取りしたい!と感じることが多いですよね。今の食品業界ではスーパーフードや低糖質がキーワードになっていますが、スーパーフードはそろそろ弾切れ、低糖質は既にあふれてしまってさほど差別化が出来なくなってきています。

そこで今回は少し視点を変えて、新しい栄養学である時間栄養学を新メニューのコンセプトにするご提案です。
低糖質ほど強烈なパンチはありませんが、朝メニューや夜メニューで特徴のあるものを売り込む助けになると考えられます。

時間栄養学って何?

簡単に言ってしまうと、朝昼晩それぞれどんな献立がお勧めなのか、研究する学問です。時間栄養学を研究されている方には怒られそうですが、将来的に日本人の食事摂取基準に取り込まれる時にはそういう表現になるはずです。というのも、食事は朝昼晩がメインですので。
これまでも、朝ご飯はしっかり食べよう!みたいなことはありましたが、時間栄養学はもっと細かい話になります。
どれくらい新しくて、どれくらい信頼性があるのか、というと、2015年度に厚生労働省が栄養指導の基本書である「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を発表しましたが、こちらに時間栄養学の考え方がようやく取り入れられ始めたところです(参考:時間栄養学研究会 ご挨拶)。策定検討会では論点に「時間栄養学」という単語も直接登場しているほどです(参照:第1回「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会論点整理)。
ということで、今後の食事指導に取り入れられていく考え方であるのはほぼ間違いないです。

具体的に何がお勧めなの?

時間栄養学はまだまだ発展中の学問ですので常に最新情報に耳をとがらせておく必要がありますが、2016年8月現在では以下のことがお勧めされています。

・朝食をきちんと食べること(朝食抜きは肥満の傾向を強めます。朝食を摂ることで学習・運動・やる気などのパフォーマンスがよくなる傾向があります。)

・夜に食べ過ぎない(摂取カロリーが夜に偏るほど、肥満の傾向が強くなります。)

・朝食でタンパク質を摂ること

今の時点では主に朝食メニューでいわゆる「重め」なものをお勧めする根拠になるのが時間栄養学、ということになりそうです。

また個別の栄養素でも研究が進んでおり、先日カゴメ株式会社から朝にトマトジュースを飲むとリコピン(抗酸化物質として脚光を集めたトマトのファイトケミカルですね!)の吸収がよい、というニュースリリースもありました(参照:株式会社カゴメニュースリリース

是非朝食メニューの開発と販促にお役立てください!

冷凍食品劣化の原因

冷凍食品が劣化する原因としてあげられるのは、冷凍庫内の平均温度だけだと考える方が大半だと思います。もちろん温度が上昇して半解凍状態にでもなれば、致命的ダメージは避けられません。

隠れた劣化原因は温度の変化

しかし、実は隠れた劣化原因があります。それは温度変化です。高くなるだけでなく、低くなっても劣化は生じます。品質保持期間中の冷凍焼けはこの温度変化による水分揮発の加速が原因だと考えられます。

冷凍機メーカーの説明と実際の使用感が異なる原因は、実はこの点にあります。

冷凍機メーカーの試験室はたいてい除湿が効いていて、さらに冷凍庫の開閉の頻度が圧倒的に少ないことがほとんどです。このおかげで温度変化の主因である「霜取り(デフロスト)」の頻度が異なります。

特に霜が付きやすい環境でデフロストを頻繁に行うようですと、冷凍機メーカーや冷凍食品メーカーのいうような品質保持期間は望めなくなります。

変化の兆候は霜の量でわかる

パッケージ内に霜がまったくない状況は現在のコールドチェーンでもあまり見かけません。そして、グレーズ処理という商品表面を氷でコーティングする手法で対策をしてあるので、解凍後の品質が正常であれば、その霜の量でも問題はありません。

ただ、庫内での劣化のスピードはまちまちです。劣化に伴って起こる現象は「パッケージ内の霜の増量」です。霜の増える速さが早くなってきたら、品質保持期間の再確認や機器の監視体制の確認が必要です。

飲食店や工場での有効な対策

監視とかはいいけど、実際どうしたらいいの?という疑問の答えは、冷凍食品といえども生鮮品と同じように早めに使い切る、これにつきます。冷凍庫のスペースも限りがありますし、品質劣化のリスクを取る理由もありません。

鮮度が維持できることが最大のメリットの冷凍食品ではありますが、可能な限り早めに使い切ることで、よりおいしく召し上がっていただけるのは間違いありません。また冷凍食品の様に長期間流通する食品の場合は、よりよい状態で出すことでクレームリスクの低減が図れます。

この記事は「新版 食品冷凍技術」を参考とし、研究職時代・冷凍ドーナツ開発時代の合わせて約20年の経験を元に作成しております。

菌が死なない、腐敗が早いのはなぜ?

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

きちんと4度で保管しているのに、足が速い。
65度で調理しているのに、生菌数が多い。

さて、問題(原因)はなんでしょうか?

機械類の表示を信じてはいけません!

日本で生活していると、機械類の表示は非常に信頼性が高く、無条件に信じてしまいがちです。
ところが、業務用の機械はそれほど信頼性が高くないことも多いです。
その一例が温度表示です。精度を±0.5度で謳っていても、実際に測定してみると庫内温度のばらつきは±5度、などという実例もありました。

特に若くて経験の浅い人ほど機械類の表示をうのみにする習慣がついていることが多いです。
実測して確かめる習慣をつけていきましょう!

温度表示は温度計の設置場所の温度

冷凍庫・冷蔵庫・(湿)温蔵庫、すべてに共通しているのは体積があることです。
一方で、温度計は点でしか測定できません。
メーカー側の温度の校正は温度計に対してのみ行われています。
つまり、表示温度は使用者の直感で感じる庫内温度を正確には表してはいないのです。

表示温度はどのくらいずれる可能性があるの?

私が扱ったことがある範囲では、保温庫(冷蔵庫のようなものをイメージしてください)で600L程度のものでも表示温度で3度、庫内温度のばらつきでさらに5度、合わせて8度も異なることもあります。こちらは温度変化がほぼなくなった状態での値ですので、断熱が悪いことも原因のひとつです。

フライ油やウォーターバスなど基本的に断熱が難しい機械にいたっては、場所による温度のずれが3度以内なら優秀に感じるくらいです。

実際の温度を知らないとどうなるのか?

明確に問題となりうるのは食中毒です。上記の通り、機器の不備・不具合のせいで表示と仕掛品等の実際の品温が8度ずれているとすると、65度に設定していたものが57度程度にしかならないことになります。57度といえば、食中毒の原因菌として有名なウエルシュ菌の限界生育温度に非常に近いです(参照:ファクトシート ウエルシュ菌食中毒 食品安全委員会 平成23年11月)。4度で保管していたつもりが実際の品温が10度を超えていた・・・というケースに至っては一般生菌による腐敗も起こりえます。

必ず実測しよう

冷蔵庫や温蔵庫は、食材の保管・鮮度保持期間を劇的に伸ばしてくれることや、ピークタイムの調理時間の短縮に貢献するなくてはならないものです。ですが、性能を過信すると思わぬ品質低下(というよりも事故)を起こすこともお分かりいただけたと思います。実際の調理現場では保存前の食材の温度や保存時間などもいろいろ変化していきます。計画した温度で保管ができているか、できれば実際のオペレーション中もしくはそれに近い状態での食材の温度変化を実測することが大切です。

その際にも、1点だけ測定して満足せず、庫内の複数の点で1週間通して計測して傾向を見るなど、変化の発生に敏感になることも大切です。

大腸菌が検出された際のチェックポイント

みなさん、こんにちは!小橋博士です!

今日は大腸菌対策のお話です。

大腸菌対策なんて、手洗い徹底と加熱で対策出来るはず!だから大腸菌が出るのは作業員が点順を踏んでいないからだ!と思っているそこのあなた!半分正解で半分不正解です。

大腸菌が検出される直接的な原因の多くは手洗い・加熱が不十分だからで間違いはないのですが、それを指摘して状況は改善したでしょうか?相変わらず検出頻度は変わらないのではないでしょうか?

大腸菌が検出された場合にチェックすべきポイント

以前から指摘している通り、ルールを守らない人が悪い、というのはあまりいい発想ではありません。毎回大腸菌が検出されるようなレベルであれば、明らかに従業員のモラルの問題なのですが、たまにしか検出されない場合はモラルよりも、どのような時にルールが守られない(もしくは守りにくい)のかを発見しましょう。

そして、そのようなルールが守られない状況の発生をどうしたら抑制できるのか、考えてみてください。くれぐれも「犯人捜し」はやめましょう。理由は「簡単なはずのことでトラブルが絶えない」をご参照頂ければ幸いです。

チェックすべきはルールそのものや、工程上での約束事、仕事の仕方など、システム側であるべきです。

モラルではなくシステムで改善を!

このように、モラルではなくシステム側をチェックすると何かいいことがあるでしょうか?モラル側に原因を求めた場合のデメリットを回避できるだけでしょうか?いいえ、ちゃんとメリットもあります。

ルールが守れない状況は大抵作業員に過剰な負荷がかかっている=大変すぎるというということを意味しています。これをシステム側で改善するということは、すなわち、ボトルネックの解消=効率アップを意味しています。もちろん、その分解決方法を考え出すことは非常に大変ですが、達成したときには「稼げる品質管理」にまた一歩近づいたことになります。

食品工場での品質管理は、多くの工場で警察みたいなポジションになりがちです。しかし、いくら取り締まりをしたところで効果は薄く、生産性の向上にはほとんど寄与しません。大変であっても是非、ボトルネックを解消するクリエイティブな品質管理を目指してみてください!

どうしても解決方法が見つからない場合は、いつでもお力になりますので、お問い合わせいただければと思います。

以上、小橋博士でした!

簡単なはずのことでトラブルが絶えない

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

品質管理をしていると、原因は簡単なはずなのに、トラブルが絶えない!ということがありますよね。基本的なことなので、教科書的に「手洗いが不十分!」とか「ルールが守れていない!」とか、指摘することは簡単です。しかし、品管の仕事はトラブルをなくすこと。では、どうしたらいいでしょうか?

責めても改善には1mmも近づかない

この問題の原因はこうのはず!あなたが原因だ!よく見る光景です。そしてこれで問題が解決した事例を私は知りません。仕事上のトラブルの場合、相手がミスを認めることはかなりレアなケースです。つまり、あなたが責めれば責めるほど、相手は予想もつかないような言い訳をしてくることになります。品質管理に携わる方なら、身に覚えがあるのではないでしょうか?

ここで分かることは、相手を責めることで得ることは少しもない、という現実です。

簡単なことこそ難しい

ここでもう一度、おかれている状況を考えてみましょう。簡単なことはそもそも本当に簡単なのでしょうか?人は非常に頻繁に基本=簡単と思い込んでいます。しかし、ここがそもそも間違いなのです。基本は非常に大切ですが、なぜ大切なのでしょうか?それは、簡単で誰でも数回は出来るのですが、続けることが難しいからです。なので、あえて「基本」と称して継続することを促しているのです。品質管理で言えば、手袋の扱いや手洗いなどがこれに該当します。

食品工場と家庭の台所は似て非なるものですが、似ているがゆえに職場での基本が守れない現実があります。基本が守れないのか!と怒るのは簡単です。しかし、微妙な違いであるが故の難しさを受け入れていかない限り、進歩はありません。

基本を維持することの難しさを現場の作業者の皆さんと共有して、怒るのではなく、困難な課題に挑戦していく心構えを共有してください。

簡単なことこそ難しい、この視点・感覚こそ、作業者の皆さんと問題意識を共有する上で必要不可欠なだけでなく、絶えないトラブル根絶の唯一の道筋です。

以上、小橋博士でした!

品質管理体制の構築ー3つの柱ー

こんにちは!小橋博士です。

今日は取引拡大に向けてかかせない、品質管理体制の構築はどうしたらいいのか?というお話です。取引を増やしたのに利益が上がらない!抜き打ち検査で相当なロスが出ている!など、もっとうまくやれる方法があるはずじゃないの?とお考えの社長様に是非読んでいただきたいです。

食品工場で管理されるべき品質

食品工場に求められる品質は以下のようなものがあります。
・衛生(1)
・重量・長さ・入り数など、契約や法律の上で守るべき品質(2)
・生産性(2)
・消費者が実感する品質(味や見た目)(3)

商品を個別に包装して第三者に販売委託をするには、こちらに挙げた順番がそのまま実現すべき優先順位となります。そして、後ろに付けた数字ごとに必要な人材が異なります。品質管理体制構築の3本柱ですね!

衛生管理はどうしたらいいのか?

衛生管理については直感・勘・商売上の経験ではどうにもなりません。
衛生管理のできる人材を確保して指導を仰ぐ以外方法はないです。適合するのは、衛生管理経験者・(管理)栄養士です。少しイレギュラーですが、衛生管理経験者ではなくても、食品衛生管理者の資格要件を満たしている方(医師・歯科医師・薬剤師・獣医師、大学で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学のいずれかの学部を卒業した方、食品衛生管理者養成施設で教育を受けた方)であれば、十分に業務をこなす能力があります。

ただし、マニュアル等が整備された状態での管理業務と、何もないところから作り上げる能力は同じようで異なります。工場でのルールをきちんとくみ上げられるか、確認することが大切です。

工程管理はどうしたらいいのか?

上の品質一覧で(2)を付けた品質は、工程管理によって実現されます。こちらは工場長経験者やトヨタ式の生産管理経験者であれば大いに活躍してくれるはずです。さらに、改善の意識をもっている方であれば、肩書によらず活躍できると思います。

ただし、ある程度のところを超えるとそもそも問題解決が出来ない事態が発生します。その理由は科学的な知識がないと、食品の製造工程で発生する問題解決ができないからです。その場合は各種専門家派遣事業を利用して頂ければ、解決への道が開けるはずです。

商品開発はどうしたらいいのか?

(3)は商品開発の段階で実現すべき品質です。食品の商品開発は味覚や視覚等で伝わる品質と安全性すなわち衛生面での品質が求められます。衛生面は衛生管理担当者が行えますので、主に味覚・視覚、お得感などを考えられる方であれば商品開発はやっていけます。社長が衛生管理担当者の業務の一端として意識して手配すれば、極端な話誰でもOKです。

求められる性格は?

ここまでは主に能力面のお話でした。しかし、性格も非常に大切です。個人的には以下のような性格(視点)を持っている方を探して頂くことをお勧めいたします。

衛生管理者・・・安全性とコストのバランスを意識できる方が最も向いています。そして残念ながら、このような人材は少ないようです。立ち上げ時期はいろいろ入用なので、法令にのっとりつつ、創意工夫で改善できる方がうれしいですよね。

工程管理者・商品開発・・・工場の生産と試験のバランス感覚のある方が望ましいです。初めは試験したいことが山積みになりますが、それぞれにきちんと優先順位をつけられるかどうかがポイントです。

あとは全体に共通することですが、コミュニケーションが取れて作業者全員に敬意をもって接することが出来る方が望ましいです。

以上、自前で整えるとかなりハードルが高いですよね。特に人を雇うのはなかなか決断がいることだと思います。そんな場合は是非、ご相談ください。FQMサポートが必要な時に必要な分だけお手伝いをさせて頂きます。

小橋博士はなんと!
・衛生管理経験者・食品衛生管理者の要件を満たす農芸化学卒業
・工程管理経験者・改善実績も多数
・商品開発経験者・お取引先からおほめ頂いた商品を2つも開発しています
なにより、経営経験がありますので、コストも常に意識しています。
お困りの際は是非お声かけ頂ければと思います。

以上、小橋博士でした!