問題解決のための3つのステップ

品質管理を担当していると避けて通れないのは問題解決です。問題解決に当たっては必ず3つのステップを意識してください。そうすることで、今まで解決できなかった問題も解決できるようになります。

1.目標を設定する

問題解決のステップなんだから、解決が目標でしょ?と考えたそこのあなた!正解なようで正解ではありません。なぜなら工場で発生する問題の多くは、完全に解決することが難しいからです。

まずは、そもそもなぜ解決したいのか?目的を明確にします。目的意識を持てば、どの程度の改善で満足できるのか目標も決まります。加えて、いつまでに解決すべきなのか期限も明確になります。

目的の明確化(なぜ解決したいのか)→対象と目標の設定(何がどのような状態になればいいか)→期限を決める(いつまでに実行するか)

ここのステップでのポイントは3つです。

1.関係者と「明文化して」共有する
きちんと明文化して確認することが大切です。ここで「目的なんて、会社の人間ならすぐわかるだろう」と横着すると、思わぬ誤解が残っていて問題解決が遅れる原因になります。また、貴重な意見が提案されるタイミングを逃すことも多いです。

2.初めの期限を短く設定する
問題解決が一回の実験(対策)で成功することは稀です。期限を決めるときは、最終的に解決しなければいけない期限の1/3程度の期限にしましょう。その期限に一旦成果(何がどの程度変化して、目標に対してどの程度改善したか?)を確認するステップが必要です。

3.責任者を決める
責任者がいないと、せっかく対策を実行したのに評価もされず、うやむやに・・・というのはよくある事例です。責任者を決めて、対策の進行を管理しましょう。

2.対策を実行する

何をどうしたいのか決まったら、どのような対策を実行したらいいのか検討しましょう。先日の記事「。今日から始める品質管理」を参考に、対策を探してみてください。

ポイントは、
・工程を増やさない
・やりやすくする
・誰でもできるようにする
など、とにかく現場の負担を減らす方向で考えることです。

あれをしたらましになるんじゃないか?そんな考えで検討を重ねていくと、結果的に労力ばかり増えて、潜在的な不具合のポイントが増えて逆効果になることもしばしばです。

対策とはシンプルにすること、そんな発想で知恵を絞ってください。

3.効果を継続的に検証する

対策が効果を発揮したとしても、それは一時的なものかもしれません。食品工場の環境・原材料の多くは季節的な影響を受けやすいです。きちんと責任者が1年を通じて効果が認められるか、定期的に検証してください。

いかがでしたか?たった3つのステップで、言われてみれば当たり前に感じると思います。ですが、きちんと意識して共有すること、期限を切って責任者が実行を管理すること、など、実は多くの会社で出来ていないことだったりします。

当たり前のことを当たり前にやる、簡単なようですがこれが難しいです。是非意識して問題解決につなげてください!

従業員はさぼってる?~その2~

指示したことが出来ていない・・・これはさぼりじゃないのか!?で始まった「従業員はさぼってる?~その1~」の続きです。

前回残ってしまった言い訳
・急な作業に時間を取られてしまった
・忘れていた
・無言、もしくは単に謝罪
・さぼり
を考察していきます。

急な作業に時間を取られた
このような言い訳の問題は、後回しするのに報告や相談が無い、ということです。しかし、この問題においても作業者に責任を求めるのは酷です。作業者側から見ると

・依頼をこなすために工程管理者等への根回しがされておらず時間が取れない
・重要性が理解できず、いつでもできそうな時でいいと感じる

品質管理上の依頼はどうしても付加的な業務という風に受け止められます。このような付加的な業務は、依頼する側がやってもらえる環境づくりに気を配ることが大切です。

作業者の評価につながるように、事前は当然のこと、事後には作業者の上司にも協力してもらった点についての報告・感謝は伝えるようにしましょう。できる環境、協力したことに対する会社としての評価が見える化されることで、このような言い訳に遭遇する事態は減っていきます。

忘れていた
忘れていた、というのも結構ありがちな事態です。このケースも上記の「急な仕事が入った」と同じように、やれる環境を作ることで半分は解決できます。

残りの半分は特別な作業のToDoリストを全作業員が確認できる形で整備することです。品質を向上させようという取り組みは、ほとんどの場合、イレギュラーな取り組みになるはずです。このような活動をきっちり進めるためには掲示板にきちんとスペースを確保してToDoリストを作成しましょう。

無言、謝罪
この場合、本当の原因は分かりません。しかし、品質管理上、意見や気持ちを伝えてくれないという事態そのものが非常に大きな問題です。

その1の「説明不足」に共通した問題点が根っこにありますが、そもそも個人を責めるべきものではなく、会社を改善することで作業者も利益を享受していくという価値観の共有が重要です。

このような場合は、是非改善活動に対する共感を得られるように話し合いをしてください。そして、共感できていない方がいるということは、工場の多くの方がまだまだ改善活動に共感していないということでもあります。

どのようにしたら共感を得られるのか、そのような視点での話し合いが大切です。間違っても説得してはダメですよ!人生はいろいろです。おそらく驚きの価値観に遭遇することも多いでしょう。それを全て包み込んでいけるような、改善の理念を熟成して、より多くの作業者の共感を得て行けるように努めてください。

さぼり
上記の「無言、謝罪」と紙一重な事案です。共感を得ることを模索しつつも、どうしてもダメなら配置換え等の対応をお願いせざるを得ない場合もあります。

以上、大抵の場合は根回し・環境作り不足が、お願いしたことが行われない原因です。仕事だからやるのが当然、良くなるんだからやるのが当然、などと思い込む前に自らを省みましょう。

なんでもやりやすいようにしていこう!この精神が品質管理をより貢献できる部門にする基本です。

以上、小橋博士でした!

従業員はさぼってる?~その1~

指示したことが出来ていない・・・これはさぼりじゃないのか!?リーダーになった多くの方が感じたことがある疑問・疑念ですよね。そしてそのまま追求・叱責に・・・というのもよく見る流れです。ですが、果たしてそれでいいのでしょうか?

怒る前に確認を!

指示していたことが出来ていない原因はなんでしょうか?
・能力的に不可能だった
・説明不足でやり方が分からなかった
・急な作業に時間を取られてしまった
・忘れていた
・無言、もしくは単に謝罪
・さぼり
どれも言い訳としてありがちで、そして一部は他人に責任転嫁しているようにもとれますよね。そしてただでさえイライラしてるのに怒りの炎に油を注ぐような言い訳です。しかし、これらの言い訳は全てペナルティに値するのでしょうか?

能力的に不可能
この言い訳については、きちんと確認をする必要があります。どの作業が能力的にできないのでしょうか?動作速度や操作が複雑すぎるなど、できない部分をきちんと把握する必要があります。その結果として

・実はできたのにできないと思い込んでいた
・本当に出来なかった

の2つのパターンが発生します。前者については、分かりやすく図解を多用した作業マニュアルを整備すべきだったと考えてください。そのうえで、マニュアル作成に助力をお願いするのがベターです。「あなたにも分かりやすく作るから、できたら分かるかどうか見てほしい」、こう伝えてモチベーションが下がった人は見たことがありません。

本当に出来なかった場合は、その工程の人員配置について再考の余地があります。

いずれにしても、この理由のケースでは相手を責めるよりも環境整備をすべきだったと考える方が後々の生産性は向上します。

説明不足
これの真の原因はなんでしょうか?
・ハイ分かりました、としか言えない雰囲気
・できそうならハイと言ってしまう性格
いずれにしても、出来ているはずのものが出来ていないと会社は困ります。会社の求めるものが、ハイというその場の気持ちよさではなく、正確な情報である、という価値観の共有を図ることが求められます。

見切り発車はせず、確認すべきことはきちんと確認する雰囲気を地道に作っていきましょう。

長くなるので本日はここまでです。
その2に続く

品質管理に役立つネットの情報

品質管理を行う(始める)上で役に立つ情報はインターネットから得られるでしょうか?答えは半分yesで半分noです。どうしてなのか、まとめていきます。

正確な部分を探そう!

インターネットで検索する場合、多くの方は「~~~すればOK!」という答えを探しています。記事を書く人は、それに応えて「~~~すればOK!」と記事をまとめてしまいます。ここが役立つ情報が得られるか?にnoと言わざるを得ない状況を生んでいます。

品質管理に役立つようなノウハウで、そのような記事が正確だったケースは政府系の記事を除いてほとんどありません。ケースバイケースなのに、分かりやすさだけを追求してしまって汎用性が著しく低い場合がほとんどです。さらに悪いのは二次的と思われる記事で、元の解釈が間違っているのでそもそも正しくないケースもあります。

上記のように不正確な記事・結論がまかり通っている状況でも、役立つ部分はあります。それは、問題解決のために使えるかもしれない方法論・考え方が見つかることです。

使えるのは方法論のピックアップ

ノーヒントで問題を解決するのと、ヒント有で解決に挑むのは天と地ほどの差があります。インターネットで解決したい事柄を検索したら、これさえやれば~~をうのみにしないで、その方法論を再検索してみましょう!

このように使えるかもしれない方法論をピックアップするのに、インターネットは非常に便利で強力なツールです。ピックアップした方法論の概略はネットで調べてもいいですが、最終的には学生が使うレベルの教科書を参考にしつつネットでかみ砕かれた情報が正しいか、検証する必要があることはお忘れなく。

新聞記者のように裏をとろう!

以上をまとめると、インターネットの情報はそのままでは使えないことがほとんどです。使う前にきちんと裏をとることが非常に重要です。もしうのみにして実行に移してしまうと、きちんと裏付けを取らない新聞記者の様に、いつかぼろが出て総すかん・・・なんてこともありえます。最悪大損害を出すことも!

このように注意と裏付けを取る手間は必要ですが、インターネットは非常に強力な検索ツールです。全否定するのでもなく、完全に肯定するのでもなく、上手に付き合えるようになりたいですね。

(2017.5.4 追記)

答えは異業種にあり!

業界内もしくは似たような業種では、発想が似てしまう上に「常識」に縛られてブレイクスルーが得られにくいです。解決の難しい問題こそ、異業種の発想や工程が参考になります。

異業種を参考にするためには、自分たちの工程の背景を詳細に把握することも必要です。この点、研究職などの学術系の人材は最適任です。理屈ばかりで付き合いにくいと感じることも多いかと思いますが、金銭的負担無しで情報提供を得られることも多いのも学術系の特徴です。お困りの際は是非ご検討ください。

FQMサポートは様々な研究者と密接なつながりがあります。もし自社でコンタクトをとることが難しいようでしたら、ご紹介させて頂くことも可能です。お気軽にご相談ください。
(追記、ここまで)

以上、小橋博士の考えるインターネット情報の品質管理への役立て方でした!

人手不足と品質管理

人手不足に悩む企業は相変わらず多いようです。そんな問題に品質管理として貢献できる点はないでしょうか?そもそも本当の退職理由は何かから考えて行きます。(注意)この記事は頑張りたい品質管理担当者や、品質管理担当者に壁を破ってほしい経営者向けの記事です。一般的な枠組み内で解決したい方には向きません。

本当の退職理由は?

退職者が経営陣に申告する退職理由は、多くの場合表向きのモノです。嫌いな人に嫌いな理由を言いにくいのと同じですよね。では、本当の理由はなんでしょうか?あくまで私が調査した範囲ですが・・・

・待遇
・やりがい
・いじめ

が主な理由です。それぞれ考察していきます。

待遇

待遇についての問題は、不十分な賃金・不公平な賃金・長時間労働・労働環境に分類できます。長時間労働はまだしも、賃金面については品質管理の出番はないように見えますが・・・、実はあります。詳細は長くなるので省きますが、そもそも賃金面の問題の根っこには長時間労働や後述するやりがい、いじめの問題があります。

ということで、長時間労働対策として、少しでも効率があがるよう工程を改善することが品質管理としてできる待遇改善への貢献です。

また労働環境としては「着替えや荷物を置くためのバックヤードが不十分」というのも大きな理由に挙げられます。バックヤードについては異物混入の観点からもしっかり整備するべきです。品質管理と絡めたアンケートをとるなど、客観性と品質管理の視点の両方からデータをまとめて経営陣に交渉することで一定の成果が得られたケースもありますので、ご参考ください。

やりがい

やりがいを持っていただくためには、なによりお客様の称賛の声をしっかり伝えることです。そして、その声が少しでも増えるように品質向上の施策をうちつづけることです。

逆に、従業員目線ですら「よくないもの」を作っているようではやりがいは地に落ちます。

また、会社の方針に反しないのであれば、給料と直結した能力評価表を作成することもひとつの手段です。何をどこまでやったらいくら稼げるのか、明確にすることでやりがいがわきます。こちらは人事部単独ではなかなかやりにくいので、工程の難易度を公平に判断して評価の基準・ポイントの詳細を作成しましょう。いわゆる、人事評価表をきちんと作るべきです。

人事評価表と聞くと、いきなりハードルが高く感じるかもしれません。普段業務指導を行うポイントをメモしておいて、それをまとめて並べれば表になります。その下に○×や点数を付けてあげれば完成です。

このような評価基準を構築することで、新しい取り組みもスムーズに進行しやすくなります。

いじめ

いじめと品質管理もまったく関係がなさそうですが、ある程度は貢献できます。まず、いじめで多いのは新人いびりです。これの最大の問題は、仕事をしたくてもやり方をきちんと教えてもらえない、という点です。やり方も教えてもらえず、単に怒られてばかりなら、誰だって嫌になりますよね。

この点の対策はマニュアルの整備です。とはいっても、冊子で用意するだけではだめです。というのも、冊子は現場に持ち込めませんし、大抵詰まるのは覚えにくい作業だからです。記憶すべきものを見やすく掲示しておくことで大分改善します。

また、作業の教育を現場の作業員に極力させないことも方法の一つです。一定の品質を維持するためにも教育のシステムを構築することは多方面にいい影響を与えます。

まとめ
以上のように、品質管理を通じて人が辞めてしまう原因を減らすことができます。やめにくくなれば人手不足は自然と解消の方向に向かいます。是非、会社全体を盛り上げられる品質管理を目指してください。

料理の提供温度

飲食店にとって、料理の最適な提供温度は何度でしょうか?多くのお店では、料理ごとに美味しく感じる温度を意識しながら提供されています。基本的にお客様は料理を冷ますことはできても温めることはできません。なので、もっともおいしい温度より上に設定して提供することが一般的です。
ですが、お客様のニーズはどうなのでしょうか?少し考えてみましょう。

食事にかかる時間を重視する人の存在

料理を提供するまでの時間が大事だ、というのは飲食業界に携わっていれば常識ですね。実際に日本政策金融公庫の調査などでもそれは裏付けられています(お店選びの基準調査はこちら)。このように、ランチタイムは料理の提供時間を重視する方が非常に多いため、リサーチでも項目として漏れていますが、実態は「食事にかかる合計時間」で判断していると推察されますその推測を裏付けるように生活情報リサーチサイトのTEPORE様の調査でもおよそ1割の方が外食を使う理由として手早く食事を済ませたいから、という理由をあげています(TEPORE 「外食」について)。

急いでいるときに熱いものが出てきたら?

一方で、お店の側は提供時間には気を遣うものの、やはり美味しいものを食べてもらいたい気持ちが強いようです。直接裏付けるデータはないのですが、一部例外を除いて基本的に熱め~適温での提供を受けることが多いですよね。ですが、その気持ちに行き過ぎを感じる場合もあります。汁物などでは特にそうですが、熱い状態であればタイミング次第で調整できるでしょう?と言わんばかりに激熱の状態で提供されるお店も身近に結構あります。チェーン店でもありますよね。

激熱の味噌汁・・・急いでいても残すのは抵抗を感じるのではないでしょうか?実際に、少し古いデータですが、生活情報リサーチサイトのアンケート調査でおよそ65%以上の方が食べ残しをすることに抵抗感を感じているそうです(参照:TEPORE 大人の食学 食べ残し)。

さて、ここで少し考えていただきたいのですが、あなたのお店のお客様は短時間で食事を済まされる方の割合はどの程度でしょうか?
それらのお客様は熱めに提供している汁物を残す割合は、他のお客様と違いませんか?
もし特定の行動(ここでは急いで食べる)を取る方が食べ残しをされるということは、そのサービスに改善点があるということですよね。
それも、残すことに後ろめたさを感じる日本人相手ならなおさらです。

うまい!はやい!やすい!のように、時間に追われる働くオトコ達を応援するお店で、まさかの激熱落とし穴・・・などということが無いように、利用シーンはよく考えて提供温度を決定して頂ければと思います。

さて、こうして振り返ると、麺の硬さ・味の濃さを選べるラーメン店はあっても、提供温度を選べるお店はあまり見かけません。もしかしたら新しい差別化のポイントになるかもしれませんね。

交差感染とアレルゲンのコンタミ

衛生管理のレベルアップを図るうえで難しいのは、交差感染とアレルゲンのコンタミに対する教育と徹底です。品質管理担当の経歴が長い方でも、指摘されれば知ってはいるものの、きちんと理解しておられる方は少ないようです。

交差感染とアレルゲンのコンタミって何?

交差感染は主に食中毒菌、コンタミについては主にアレルゲンについて使われる言葉ですが、共通するのは「意図しない混入」であることです。よくあるのは

・違う作業に移る前に行う洗浄が不十分
・作業の途中で生もの・アレルゲンに触ってしまったまま、別の作業を継続

の2点です。食品だと想像しにくいのですが、病原菌等を含む生ものやアレルゲンを含む原材料・仕掛品を青いインクだと思ってください。両者を含まないものは白いインクだとします。青いインクを触った手で白いインクを扱う作業をしたらどうなるでしょうか?青が微量とはいえ、混ざりそうですよね?このような状況が交差感染やアレルゲンのコンタミが発生する状況です。

白色の商品として売りだしたのに、青が混ざったような色だったら、お客様はどう思うでしょうか?クレームの原因になりますよね。交差感染やアレルゲンのコンタミの場合は見た目では分かりませんが、「病気の発症」という形で表れてしまいます。

地道な教育とラインの見直しを!

交差感染とコンタミは非常に大きな問題ですが、食品工場での最大の問題は「ということで、交差感染やコンタミを発生させないように気を付けて作業してください」で終わってしまうところです。

なぜ問題なのでしょうか?

上に例として挙げたインクの事例のように、目に見えるものなら報告がきます。しかし、病原菌もアレルゲンも目には見えません。また、基本的に作業者の知識・意識は欠乏しがちです。実感がないものは話としては聞けても、対応するのは難しいのです。これが、いくら教育を繰り返しても交差感染・コンタミの頻度が減らない理由です。

このような事情から、最大の対策は交差感染・コンタミが発生しないライン運営です。教育においても、最大の力点は「交差感染等を防ぐルールが守りにくかったら報告すること」です。

ここでも、作業者の努力やモラルに依存することはあまり得策ではありません。品質管理のレベルアップのためには、仕組みそのものを改善していくことがもっとも有効です。

それでも交差感染やコンタミが起こってしまうんです!みんな気を付けているはずなのに・・・というお悩みをお持ちの担当者様は是非、メールでお問い合わせください。工場を拝見すればすぐに原因特定できますので。

以上、小橋博士でした。

低糖質の次は何?

商品開発をしていると、流行を先取りしたい!と感じることが多いですよね。今の食品業界ではスーパーフードや低糖質がキーワードになっていますが、スーパーフードはそろそろ弾切れ、低糖質は既にあふれてしまってさほど差別化が出来なくなってきています。

そこで今回は少し視点を変えて、新しい栄養学である時間栄養学を新メニューのコンセプトにするご提案です。
低糖質ほど強烈なパンチはありませんが、朝メニューや夜メニューで特徴のあるものを売り込む助けになると考えられます。

時間栄養学って何?

簡単に言ってしまうと、朝昼晩それぞれどんな献立がお勧めなのか、研究する学問です。時間栄養学を研究されている方には怒られそうですが、将来的に日本人の食事摂取基準に取り込まれる時にはそういう表現になるはずです。というのも、食事は朝昼晩がメインですので。
これまでも、朝ご飯はしっかり食べよう!みたいなことはありましたが、時間栄養学はもっと細かい話になります。
どれくらい新しくて、どれくらい信頼性があるのか、というと、2015年度に厚生労働省が栄養指導の基本書である「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を発表しましたが、こちらに時間栄養学の考え方がようやく取り入れられ始めたところです(参考:時間栄養学研究会 ご挨拶)。策定検討会では論点に「時間栄養学」という単語も直接登場しているほどです(参照:第1回「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会論点整理)。
ということで、今後の食事指導に取り入れられていく考え方であるのはほぼ間違いないです。

具体的に何がお勧めなの?

時間栄養学はまだまだ発展中の学問ですので常に最新情報に耳をとがらせておく必要がありますが、2016年8月現在では以下のことがお勧めされています。

・朝食をきちんと食べること(朝食抜きは肥満の傾向を強めます。朝食を摂ることで学習・運動・やる気などのパフォーマンスがよくなる傾向があります。)

・夜に食べ過ぎない(摂取カロリーが夜に偏るほど、肥満の傾向が強くなります。)

・朝食でタンパク質を摂ること

今の時点では主に朝食メニューでいわゆる「重め」なものをお勧めする根拠になるのが時間栄養学、ということになりそうです。

また個別の栄養素でも研究が進んでおり、先日カゴメ株式会社から朝にトマトジュースを飲むとリコピン(抗酸化物質として脚光を集めたトマトのファイトケミカルですね!)の吸収がよい、というニュースリリースもありました(参照:株式会社カゴメニュースリリース

是非朝食メニューの開発と販促にお役立てください!

冷凍食品劣化の原因

冷凍食品が劣化する原因としてあげられるのは、冷凍庫内の平均温度だけだと考える方が大半だと思います。もちろん温度が上昇して半解凍状態にでもなれば、致命的ダメージは避けられません。

隠れた劣化原因は温度の変化

しかし、実は隠れた劣化原因があります。それは温度変化です。高くなるだけでなく、低くなっても劣化は生じます。品質保持期間中の冷凍焼けはこの温度変化による水分揮発の加速が原因だと考えられます。

冷凍機メーカーの説明と実際の使用感が異なる原因は、実はこの点にあります。

冷凍機メーカーの試験室はたいてい除湿が効いていて、さらに冷凍庫の開閉の頻度が圧倒的に少ないことがほとんどです。このおかげで温度変化の主因である「霜取り(デフロスト)」の頻度が異なります。

特に霜が付きやすい環境でデフロストを頻繁に行うようですと、冷凍機メーカーや冷凍食品メーカーのいうような品質保持期間は望めなくなります。

変化の兆候は霜の量でわかる

パッケージ内に霜がまったくない状況は現在のコールドチェーンでもあまり見かけません。そして、グレーズ処理という商品表面を氷でコーティングする手法で対策をしてあるので、解凍後の品質が正常であれば、その霜の量でも問題はありません。

ただ、庫内での劣化のスピードはまちまちです。劣化に伴って起こる現象は「パッケージ内の霜の増量」です。霜の増える速さが早くなってきたら、品質保持期間の再確認や機器の監視体制の確認が必要です。

飲食店や工場での有効な対策

監視とかはいいけど、実際どうしたらいいの?という疑問の答えは、冷凍食品といえども生鮮品と同じように早めに使い切る、これにつきます。冷凍庫のスペースも限りがありますし、品質劣化のリスクを取る理由もありません。

鮮度が維持できることが最大のメリットの冷凍食品ではありますが、可能な限り早めに使い切ることで、よりおいしく召し上がっていただけるのは間違いありません。また冷凍食品の様に長期間流通する食品の場合は、よりよい状態で出すことでクレームリスクの低減が図れます。

この記事は「新版 食品冷凍技術」を参考とし、研究職時代・冷凍ドーナツ開発時代の合わせて約20年の経験を元に作成しております。

菌が死なない、腐敗が早いのはなぜ?

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

きちんと4度で保管しているのに、足が速い。
65度で調理しているのに、生菌数が多い。

さて、問題(原因)はなんでしょうか?

機械類の表示を信じてはいけません!

日本で生活していると、機械類の表示は非常に信頼性が高く、無条件に信じてしまいがちです。
ところが、業務用の機械はそれほど信頼性が高くないことも多いです。
その一例が温度表示です。精度を±0.5度で謳っていても、実際に測定してみると庫内温度のばらつきは±5度、などという実例もありました。

特に若くて経験の浅い人ほど機械類の表示をうのみにする習慣がついていることが多いです。
実測して確かめる習慣をつけていきましょう!

温度表示は温度計の設置場所の温度

冷凍庫・冷蔵庫・(湿)温蔵庫、すべてに共通しているのは体積があることです。
一方で、温度計は点でしか測定できません。
メーカー側の温度の校正は温度計に対してのみ行われています。
つまり、表示温度は使用者の直感で感じる庫内温度を正確には表してはいないのです。

表示温度はどのくらいずれる可能性があるの?

私が扱ったことがある範囲では、保温庫(冷蔵庫のようなものをイメージしてください)で600L程度のものでも表示温度で3度、庫内温度のばらつきでさらに5度、合わせて8度も異なることもあります。こちらは温度変化がほぼなくなった状態での値ですので、断熱が悪いことも原因のひとつです。

フライ油やウォーターバスなど基本的に断熱が難しい機械にいたっては、場所による温度のずれが3度以内なら優秀に感じるくらいです。

実際の温度を知らないとどうなるのか?

明確に問題となりうるのは食中毒です。上記の通り、機器の不備・不具合のせいで表示と仕掛品等の実際の品温が8度ずれているとすると、65度に設定していたものが57度程度にしかならないことになります。57度といえば、食中毒の原因菌として有名なウエルシュ菌の限界生育温度に非常に近いです(参照:ファクトシート ウエルシュ菌食中毒 食品安全委員会 平成23年11月)。4度で保管していたつもりが実際の品温が10度を超えていた・・・というケースに至っては一般生菌による腐敗も起こりえます。

必ず実測しよう

冷蔵庫や温蔵庫は、食材の保管・鮮度保持期間を劇的に伸ばしてくれることや、ピークタイムの調理時間の短縮に貢献するなくてはならないものです。ですが、性能を過信すると思わぬ品質低下(というよりも事故)を起こすこともお分かりいただけたと思います。実際の調理現場では保存前の食材の温度や保存時間などもいろいろ変化していきます。計画した温度で保管ができているか、できれば実際のオペレーション中もしくはそれに近い状態での食材の温度変化を実測することが大切です。

その際にも、1点だけ測定して満足せず、庫内の複数の点で1週間通して計測して傾向を見るなど、変化の発生に敏感になることも大切です。