品質向上目標~賞味期限の改善~ その2

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

本日の内容は具体的にどのように賞味期限を改善するか、ということです。
賞味期限は主に以下の3つによって決まります。

1.微生物による腐敗が発生する期限
2.化学的に成分が劣化する期限
3.でんぷんのα化など、化学的な成分は変わらないものの、構造が変化することで品質が劣化する期限

はじめに微生物による腐敗から見ていきましょう。
既に微生物が指数関数的に増えることはご存知だと思いますが、大抵は縦軸が対数表記のグラフをご覧になっていると思います。ここでは通常のグラフにした場合どうなるかをまずご覧ください。細菌の増殖曲線.jpg
このグラフはラグフェイズ2時間、その後は1匹の細菌が30分ごとに増殖を繰り返した場合のグラフです。
30分の世代時間は比較的不自由なく増殖できるときの時間です。普段の検査では世代時間を意識しておられない方が多いと思います。しかし、それではある時突然腐敗状態になる、という印象になるのではないでしょうか?このケースでは大体12時間くらいからが怪しい感じですよね。でも実際は2時間後から増殖が同じペースで起こっています。

微生物対策で大切なことは
・ラグフェイズを長くする
・世代時間を長くする
この2点です。

ラグフェイズを長くする対策の有名な例は枯草菌芽胞に対する酢酸系製剤の添加です。パン類などではラグフェイズがおよそ1日ほど延長されることが多いようです。アルコール製剤や脱酸素剤もこちらの部類です。ラグフェイズ延長は特殊な環境が壊れた場合、即腐敗が進行します。つまり、包装単位ごとにリスクが発生するため出荷判定は確実に行えるような工夫も併せて行う必要があります。

pHや塩濃度の調整は世代時間を長くしてくれます。こちらはロットごとの判定で十分ですが、0.1や1割の違いで大差が生じることもあります。詳細にデータを集めて安全のための掛け目を決める必要があります。

ちなみに、完全に(あるいは非常に高度に)滅菌する、という方法もあります。レトルトパウチがその例ですね。この場合、菌がいるかどうかを判定するための方法が求められます。数日放置して袋や缶が膨張しているかどうか?で判定を行うことになると思います。

他にもあまり一般的ではないというか、法令で規制されているような方法もあります。
大きな設備投資なしで微生物対策をしようとした場合、初めの2つが有効です。ただ、延長期限が非常に長い場合は、アルコール製剤・脱酸素剤使用は包装用の機械の調整が必要になる場合もあります。

特に世代時間のばらつきがなぜ発生しているのか?という視点は普段の検査にやりがいを増やしてくれると思います!世代時間が長くなる条件を突き止めて賞味期限の延長策につながるとうれしいですよ!

残りはまた後日に!

以上小橋博士でした。

品質向上目標~賞味期限の改善~ その1

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

先日いくつかテーマをあげましたが、まずは、コスト削減・売り上げ拡大両方に即効性のある「賞味期限の改善(延長)」をテーマにしたいと思います。

といっても、まずはどうして賞味期限の延長がコスト削減・売り上げ拡大に効果があるか?
本日はこちらについて、確認します。

主に影響を受けるのは
・生産コスト
・廃棄コスト
・輸送コスト
・販路
の4つだと思いますが、それぞれなぜ影響があるのか、確認していきましょう。

・生産コスト
賞味期限が仮に3週間伸びた場合、一般的には1週間分以上の生産量をまとめて製造することが可能です。3週間伸びたのになぜ1週間か?営業経験がある方はぴんと来ると思いますが、生産・流通・消費者の1:1:1ルールが存在するからです。こちらの削減効果は生産時間は短いのに、毎日のように作らないといけないような製品でもっとも効果があります。生産頻度が減ることによって生産ラインの切り替えコストが減少するからです。また、生産時間が長い場合は最適化のモチベーションが湧き易く、パート従業員からの効率化提案も受けやすくなります。

・廃棄コスト
賞味期限が伸びることで、単純に出荷制限にかかる確率が減少します。また、小売店における店頭ロスを減らすこともできます。小売店との契約によっては店頭ロスの補てんを求められることもあるため、こちらのコストも抑制することが可能です。

・輸送コスト
賞味期限が伸びることによって、輸送ロットを増やすことが可能です。大雑把ですが、賞味期限が2倍になれば2倍の量を同時に輸送する交渉ができます(私はこのような交渉で輸送コストを下げた経験があります)。段ボールへの入数を増やすことで包材単価は下がりますし、送料自体も減少することがあります。場合によっては輸送頻度を減らすこともでき、店舗配送用のコンテナの積載率が向上することもあります。こちらは配送先次第ですので、効果は営業部等に確認する必要があります。能動的に動かないと削減できない部分ですので、賞味期限延長の際には積極的に動いて頂きましょう。

・販路
賞味期限が伸びることによって販売可能になるエリアが増えることがあります。特に賞味期限が3か月未満の商品の場合、効果が大きいです。また賞味期限が1年を超えると海外への展開も検討可能になります。こちらも能動的に動かないと広がらないので、営業部等関係部署に積極的に働きかける必要があります。

こうしてみると、賞味期限の延長に協力できれば経営に大きなインパクトがありますね。初期の賞味期限は商品開発担当が設定すると思います。しかし、品質管理の立場から協力できることもあります。次回はどのようにして賞味期限を延長するのか、ご紹介したいと思います。

以上小橋博士でした!

品質管理は目的を明確に!

こんにちは!小橋博士です。

食品工場での品質管理部門で一番の問題は「品質監視」部門になっていることではないでしょうか?
もちろん、一定の品質を維持していることを確認するのは非常に重要です。
しかし、監視だけでいい、となると途端に進歩が止まってしまうことが多いと感じています。

会社としての課題に一緒に挑戦してこそ、やりがいと私も含めてみなさんの成長につながっていくはずです!
ということで、営業・新商品開発で私が感じた品質管理部が貢献できるポイントを少し挙げてみます!

対象→テーマ→解決することで得られる成果例という感じで列挙します。

賞味期限の短いもの→どうやったら賞味期限が延長できるか→売り込み先の拡大
生産を急ぐ必要があるもの→生産指示から完了までの時間短縮→物流の改善
形状のばらつきが激しいもの→どうやったら均質にできるか→ロスの低減
作業工程の長いもの→仕掛品の保存方法改善or開発→生産効率の向上及び新商品開発の可能性拡大

ちょっと抽象的なのでわかりにくいと思います。後日具体例を交えてブログに書き込みたいと思います。
営業部や商品開発部とコミュニケーションをとって課題=目的を明確にすることで、品質管理は多方面に貢献していける部署に変わります!

人事担当とのコミュニケーション

こんにちは!小橋博士です。

品質管理でもっとも大切なことは工場全体で品質を作り上げる、という考え方です。
概念的で多くの方もおっしゃることですので、逆にピンとこないかもしれませんね。

食品工場の場合は、これまでも述べてきた通り品質管理が困難です。
そもそも管理基準の作成自体が困難であることがほとんどです。

このような状態で品質を作りこむためには実際に作業をしている人の「これはいつも通りね」という感覚です。この感覚をまとめ上げることこそ、品質管理の第一歩になります。

作業に携わる方とのコミュニケーションにはコツはあります。
ただ、そうはいっても限界があるのは確かです。食品工場で働く人の気質はばらつきが激しく、しっかり人間関係を構築するにはやはりそれなりの時間がかかってしまいます。
これまで私が見てきた現場では、相手の立場が変わると態度も変わることが多かったです。人間なので当たり前と言えば当たり前のことですよね。

そういう立場の違う人を援軍にしてしまうと品質管理のレベルアップが早くなります。
社内を見回してみましょう・・・人事の担当と品質について話をしたことはあるでしょうか?
人間、褒められてこそ、張り切って頑張るものです。
何気ない一言も今後の改善活動になるようなことは積極的に評価することが大事です。
そして、その評価を形にするのは人事の担当者であることが多いはずですよね。
しっかり人事担当とコミュニケーションをとって、品質改善に参加してくれている方を積極的に評価できる雰囲気を作っていく、そういう方向も必要です。

品質改善事例 科学的知識を活用した事例

皆様こんにちは!小橋博士です。

 品質改善事例を紹介して欲しいというご要望もしばしば頂きますのでご紹介させていただきます。
今回は油で揚げたものが油っこくならないようにしたい、とのご要望にお答えした事例です。

 そもそも、油がしみこむのは2つのパターンがあります。
・スポンジのように吸い込むパターン
・元々あった水分と入れ替わるようにしみこむパターン

 食品製造の現場では米菓など一部を除いて後者が多いと思われます。この場合、水が入れ替わりにくくすれば油のしみこみが抑えられることになります。つまり、保水性の高い原材料を使うべき、となります。フライですので高次構造(繊維の畳み方などのことです)が必要な素材はNG。さらに天然素材ということでご要望がありましたので・・・結局候補を挙げてバッターへの配合比率を調整することで油のしみこみを抑制することに成功しました。

 食品に含まれる分子がどのように振る舞うことで問題が発生しているのかを考察することで、研究開発の方向性を示せることが博士ならではのポイントです。

 場合によっては飛散する材料では使いにくい、、など違う面での問題も発生することもあります。そういうケースの事例も蓄積がありますので是非無料相談をご利用いただければと思います。

まずは基礎(3S)から

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

 私が良く尋ねられるのは「品質向上にはまず何からしたらいいですか?」ということです。
その際にお答えするのは「3Sの徹底」です。いろいろな考え方・見方があるのですが、3Sを通じて2つのことを実現して欲しいのです。その2つとは・・・

・見える化
・コミュニケーションの向上

です。この2つは3Sだけでなく、会社のあらゆる改善活動で必要なことですよね。ですので、特定の少数の人によって働きやすさ100点の環境を実現するよりも、より多くの人が見える化とコミュニケーションを意識して作り上げた90点の環境の方が価値がある、とすら思います。

 品質管理が目指すのは持続的な品質向上であって整理整頓されて清潔な職場はその一部です。品質向上のためにも「見える化」と「コミュニケーションの向上」の2つはかかせません。イノベーションの種は関わる人が多いほうが生まれやすいからです。この2つを向上させるきっかけにふさわしいのが3S活動なのです。というのも整理整頓清掃に関しては学歴などはあまり関係なく、その気になれば大部分の人がなんらかのアイデアを出せるからです。私も工場勤務の時は「あんた頭はいいのに、こういうのは苦手なのねぇ~」などとよくからかわれながら皆さんのアイデアを頂いたものでした。

 全員に参加して頂くのは非常に難しい面もあります。ただ、やはり会社の空気というのはあるもので、少しずつ参加者が増えていくと広がっていきます。また、社長へのプレゼンテーションも3S(5S)は大事です!では通らないことがほとんどだと思いますので、全員参加の品質改善活動の練習というか空気づくりのためにやります!という点で押してみてはいかがでしょうか?

 3S活動の具体的な進め方は会社の規模や雰囲気によりますので、詳細ご希望の方は是非メールでお問い合わせいただければと思います。

コミュニケーションと作業標準

みなさんこんにちは!小橋博士です。

 話が長くなりそうなので結論から書くと、ライン従事者とのなにげないコミュニケーションから情報を拾うことは大切です。ということです。特にコツに関する話には実際に従事して観察しないとわからない情報が埋まっていることが多いです!

以下本題
 品質管理担当者はおそらく現場のレベルでは科学的知見を多くお持ちだと思います。職人さんとお話をしていると「職人さんは、なぜそんなことが気になったのか?」という疑問を感じることが多くあります。そこから見えてくるのが作業の実態だったりします。

 例えばある職人さんは「冷えた液卵から先に入れるのと、水を先に入れるのでは最終品温が変わる」と言っていました。そこにポイントがあるという主張です。ですが物理的には非常に違和感を感じます。作業標準では投入後速やかに混ぜることになっているので温度分布によって最終温度が明らかに変わることは考えづらいです。
 そこで「もしかして、投入後すぐに混ぜてないのでは?」と尋ねたところ、見事正解でした。そのラインは、製品の切り替えが多いときは1時間で3回もあるために、限られた人員でこなすにはそういう段取りにせざるを得なかった、とのことです。当然品質はバラツキが大きく、後工程に負担のしわ寄せがいっていました。
 このケースでは、人員配置を変更して作業標準を守れる環境にすることでバラつきを解消し、結果的に生産性が向上しました。職人さんにはビフォアアフターを確認して頂き、後工程の従事者からの「いいね!」を直接伝えて頂きました。その結果、「釜に入れたらすぐ混ぜる」という作業標準への評価が変わり、より最適な段取りに変わりました。

 上記は意味のある作業標準であったためこのような結果になりましたが、そもそも作業標準が適切なのか?というチェックも重要です。製品の品質に差がでないような厳しい標準が存在すると、結果的に作業標準自体が「理想論」となって軽視されるようになります。現場の方とコミュニケーションをとりつつ、実態にあった作業標準を一緒にバランスよく構築していく、これが作業標準の徹底と品質向上につながっていくと痛感しております。