人手不足と品質管理

人手不足に悩む企業は相変わらず多いようです。そんな問題に品質管理として貢献できる点はないでしょうか?そもそも本当の退職理由は何かから考えて行きます。(注意)この記事は頑張りたい品質管理担当者や、品質管理担当者に壁を破ってほしい経営者向けの記事です。一般的な枠組み内で解決したい方には向きません。

本当の退職理由は?

退職者が経営陣に申告する退職理由は、多くの場合表向きのモノです。嫌いな人に嫌いな理由を言いにくいのと同じですよね。では、本当の理由はなんでしょうか?あくまで私が調査した範囲ですが・・・

・待遇
・やりがい
・いじめ

が主な理由です。それぞれ考察していきます。

待遇

待遇についての問題は、不十分な賃金・不公平な賃金・長時間労働・労働環境に分類できます。長時間労働はまだしも、賃金面については品質管理の出番はないように見えますが・・・、実はあります。詳細は長くなるので省きますが、そもそも賃金面の問題の根っこには長時間労働や後述するやりがい、いじめの問題があります。

ということで、長時間労働対策として、少しでも効率があがるよう工程を改善することが品質管理としてできる待遇改善への貢献です。

また労働環境としては「着替えや荷物を置くためのバックヤードが不十分」というのも大きな理由に挙げられます。バックヤードについては異物混入の観点からもしっかり整備するべきです。品質管理と絡めたアンケートをとるなど、客観性と品質管理の視点の両方からデータをまとめて経営陣に交渉することで一定の成果が得られたケースもありますので、ご参考ください。

やりがい

やりがいを持っていただくためには、なによりお客様の称賛の声をしっかり伝えることです。そして、その声が少しでも増えるように品質向上の施策をうちつづけることです。

逆に、従業員目線ですら「よくないもの」を作っているようではやりがいは地に落ちます。

また、会社の方針に反しないのであれば、給料と直結した能力評価表を作成することもひとつの手段です。何をどこまでやったらいくら稼げるのか、明確にすることでやりがいがわきます。こちらは人事部単独ではなかなかやりにくいので、工程の難易度を公平に判断して評価の基準・ポイントの詳細を作成しましょう。いわゆる、人事評価表をきちんと作るべきです。

人事評価表と聞くと、いきなりハードルが高く感じるかもしれません。普段業務指導を行うポイントをメモしておいて、それをまとめて並べれば表になります。その下に○×や点数を付けてあげれば完成です。

このような評価基準を構築することで、新しい取り組みもスムーズに進行しやすくなります。

いじめ

いじめと品質管理もまったく関係がなさそうですが、ある程度は貢献できます。まず、いじめで多いのは新人いびりです。これの最大の問題は、仕事をしたくてもやり方をきちんと教えてもらえない、という点です。やり方も教えてもらえず、単に怒られてばかりなら、誰だって嫌になりますよね。

この点の対策はマニュアルの整備です。とはいっても、冊子で用意するだけではだめです。というのも、冊子は現場に持ち込めませんし、大抵詰まるのは覚えにくい作業だからです。記憶すべきものを見やすく掲示しておくことで大分改善します。

また、作業の教育を現場の作業員に極力させないことも方法の一つです。一定の品質を維持するためにも教育のシステムを構築することは多方面にいい影響を与えます。

まとめ
以上のように、品質管理を通じて人が辞めてしまう原因を減らすことができます。やめにくくなれば人手不足は自然と解消の方向に向かいます。是非、会社全体を盛り上げられる品質管理を目指してください。

交差感染とアレルゲンのコンタミ

衛生管理のレベルアップを図るうえで難しいのは、交差感染とアレルゲンのコンタミに対する教育と徹底です。品質管理担当の経歴が長い方でも、指摘されれば知ってはいるものの、きちんと理解しておられる方は少ないようです。

交差感染とアレルゲンのコンタミって何?

交差感染は主に食中毒菌、コンタミについては主にアレルゲンについて使われる言葉ですが、共通するのは「意図しない混入」であることです。よくあるのは

・違う作業に移る前に行う洗浄が不十分
・作業の途中で生もの・アレルゲンに触ってしまったまま、別の作業を継続

の2点です。食品だと想像しにくいのですが、病原菌等を含む生ものやアレルゲンを含む原材料・仕掛品を青いインクだと思ってください。両者を含まないものは白いインクだとします。青いインクを触った手で白いインクを扱う作業をしたらどうなるでしょうか?青が微量とはいえ、混ざりそうですよね?このような状況が交差感染やアレルゲンのコンタミが発生する状況です。

白色の商品として売りだしたのに、青が混ざったような色だったら、お客様はどう思うでしょうか?クレームの原因になりますよね。交差感染やアレルゲンのコンタミの場合は見た目では分かりませんが、「病気の発症」という形で表れてしまいます。

地道な教育とラインの見直しを!

交差感染とコンタミは非常に大きな問題ですが、食品工場での最大の問題は「ということで、交差感染やコンタミを発生させないように気を付けて作業してください」で終わってしまうところです。

なぜ問題なのでしょうか?

上に例として挙げたインクの事例のように、目に見えるものなら報告がきます。しかし、病原菌もアレルゲンも目には見えません。また、基本的に作業者の知識・意識は欠乏しがちです。実感がないものは話としては聞けても、対応するのは難しいのです。これが、いくら教育を繰り返しても交差感染・コンタミの頻度が減らない理由です。

このような事情から、最大の対策は交差感染・コンタミが発生しないライン運営です。教育においても、最大の力点は「交差感染等を防ぐルールが守りにくかったら報告すること」です。

ここでも、作業者の努力やモラルに依存することはあまり得策ではありません。品質管理のレベルアップのためには、仕組みそのものを改善していくことがもっとも有効です。

それでも交差感染やコンタミが起こってしまうんです!みんな気を付けているはずなのに・・・というお悩みをお持ちの担当者様は是非、メールでお問い合わせください。工場を拝見すればすぐに原因特定できますので。

以上、小橋博士でした。

冷凍食品劣化の原因

冷凍食品が劣化する原因としてあげられるのは、冷凍庫内の平均温度だけだと考える方が大半だと思います。もちろん温度が上昇して半解凍状態にでもなれば、致命的ダメージは避けられません。

隠れた劣化原因は温度の変化

しかし、実は隠れた劣化原因があります。それは温度変化です。高くなるだけでなく、低くなっても劣化は生じます。品質保持期間中の冷凍焼けはこの温度変化による水分揮発の加速が原因だと考えられます。

冷凍機メーカーの説明と実際の使用感が異なる原因は、実はこの点にあります。

冷凍機メーカーの試験室はたいてい除湿が効いていて、さらに冷凍庫の開閉の頻度が圧倒的に少ないことがほとんどです。このおかげで温度変化の主因である「霜取り(デフロスト)」の頻度が異なります。

特に霜が付きやすい環境でデフロストを頻繁に行うようですと、冷凍機メーカーや冷凍食品メーカーのいうような品質保持期間は望めなくなります。

変化の兆候は霜の量でわかる

パッケージ内に霜がまったくない状況は現在のコールドチェーンでもあまり見かけません。そして、グレーズ処理という商品表面を氷でコーティングする手法で対策をしてあるので、解凍後の品質が正常であれば、その霜の量でも問題はありません。

ただ、庫内での劣化のスピードはまちまちです。劣化に伴って起こる現象は「パッケージ内の霜の増量」です。霜の増える速さが早くなってきたら、品質保持期間の再確認や機器の監視体制の確認が必要です。

飲食店や工場での有効な対策

監視とかはいいけど、実際どうしたらいいの?という疑問の答えは、冷凍食品といえども生鮮品と同じように早めに使い切る、これにつきます。冷凍庫のスペースも限りがありますし、品質劣化のリスクを取る理由もありません。

鮮度が維持できることが最大のメリットの冷凍食品ではありますが、可能な限り早めに使い切ることで、よりおいしく召し上がっていただけるのは間違いありません。また冷凍食品の様に長期間流通する食品の場合は、よりよい状態で出すことでクレームリスクの低減が図れます。

この記事は「新版 食品冷凍技術」を参考とし、研究職時代・冷凍ドーナツ開発時代の合わせて約20年の経験を元に作成しております。

菌が死なない、腐敗が早いのはなぜ?

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

きちんと4度で保管しているのに、足が速い。
65度で調理しているのに、生菌数が多い。

さて、問題(原因)はなんでしょうか?

機械類の表示を信じてはいけません!

日本で生活していると、機械類の表示は非常に信頼性が高く、無条件に信じてしまいがちです。
ところが、業務用の機械はそれほど信頼性が高くないことも多いです。
その一例が温度表示です。精度を±0.5度で謳っていても、実際に測定してみると庫内温度のばらつきは±5度、などという実例もありました。

特に若くて経験の浅い人ほど機械類の表示をうのみにする習慣がついていることが多いです。
実測して確かめる習慣をつけていきましょう!

温度表示は温度計の設置場所の温度

冷凍庫・冷蔵庫・(湿)温蔵庫、すべてに共通しているのは体積があることです。
一方で、温度計は点でしか測定できません。
メーカー側の温度の校正は温度計に対してのみ行われています。
つまり、表示温度は使用者の直感で感じる庫内温度を正確には表してはいないのです。

表示温度はどのくらいずれる可能性があるの?

私が扱ったことがある範囲では、保温庫(冷蔵庫のようなものをイメージしてください)で600L程度のものでも表示温度で3度、庫内温度のばらつきでさらに5度、合わせて8度も異なることもあります。こちらは温度変化がほぼなくなった状態での値ですので、断熱が悪いことも原因のひとつです。

フライ油やウォーターバスなど基本的に断熱が難しい機械にいたっては、場所による温度のずれが3度以内なら優秀に感じるくらいです。

実際の温度を知らないとどうなるのか?

明確に問題となりうるのは食中毒です。上記の通り、機器の不備・不具合のせいで表示と仕掛品等の実際の品温が8度ずれているとすると、65度に設定していたものが57度程度にしかならないことになります。57度といえば、食中毒の原因菌として有名なウエルシュ菌の限界生育温度に非常に近いです(参照:ファクトシート ウエルシュ菌食中毒 食品安全委員会 平成23年11月)。4度で保管していたつもりが実際の品温が10度を超えていた・・・というケースに至っては一般生菌による腐敗も起こりえます。

必ず実測しよう

冷蔵庫や温蔵庫は、食材の保管・鮮度保持期間を劇的に伸ばしてくれることや、ピークタイムの調理時間の短縮に貢献するなくてはならないものです。ですが、性能を過信すると思わぬ品質低下(というよりも事故)を起こすこともお分かりいただけたと思います。実際の調理現場では保存前の食材の温度や保存時間などもいろいろ変化していきます。計画した温度で保管ができているか、できれば実際のオペレーション中もしくはそれに近い状態での食材の温度変化を実測することが大切です。

その際にも、1点だけ測定して満足せず、庫内の複数の点で1週間通して計測して傾向を見るなど、変化の発生に敏感になることも大切です。

大腸菌が検出された際のチェックポイント

みなさん、こんにちは!小橋博士です!

今日は大腸菌対策のお話です。

大腸菌対策なんて、手洗い徹底と加熱で対策出来るはず!だから大腸菌が出るのは作業員が点順を踏んでいないからだ!と思っているそこのあなた!半分正解で半分不正解です。

大腸菌が検出される直接的な原因の多くは手洗い・加熱が不十分だからで間違いはないのですが、それを指摘して状況は改善したでしょうか?相変わらず検出頻度は変わらないのではないでしょうか?

大腸菌が検出された場合にチェックすべきポイント

以前から指摘している通り、ルールを守らない人が悪い、というのはあまりいい発想ではありません。毎回大腸菌が検出されるようなレベルであれば、明らかに従業員のモラルの問題なのですが、たまにしか検出されない場合はモラルよりも、どのような時にルールが守られない(もしくは守りにくい)のかを発見しましょう。

そして、そのようなルールが守られない状況の発生をどうしたら抑制できるのか、考えてみてください。くれぐれも「犯人捜し」はやめましょう。理由は「簡単なはずのことでトラブルが絶えない」をご参照頂ければ幸いです。

チェックすべきはルールそのものや、工程上での約束事、仕事の仕方など、システム側であるべきです。

モラルではなくシステムで改善を!

このように、モラルではなくシステム側をチェックすると何かいいことがあるでしょうか?モラル側に原因を求めた場合のデメリットを回避できるだけでしょうか?いいえ、ちゃんとメリットもあります。

ルールが守れない状況は大抵作業員に過剰な負荷がかかっている=大変すぎるというということを意味しています。これをシステム側で改善するということは、すなわち、ボトルネックの解消=効率アップを意味しています。もちろん、その分解決方法を考え出すことは非常に大変ですが、達成したときには「稼げる品質管理」にまた一歩近づいたことになります。

食品工場での品質管理は、多くの工場で警察みたいなポジションになりがちです。しかし、いくら取り締まりをしたところで効果は薄く、生産性の向上にはほとんど寄与しません。大変であっても是非、ボトルネックを解消するクリエイティブな品質管理を目指してみてください!

どうしても解決方法が見つからない場合は、いつでもお力になりますので、お問い合わせいただければと思います。

以上、小橋博士でした!

品質管理部の売上貢献

みなさん、あけましておめでとうございます!小橋博士です。

品質管理部はいつも同じことをしていていいよね、とはもう言わせたくない!売上貢献をしていくにはどうしたらいいの?今回はそんな疑問への一つの答えを記事にまとめたいと思います。

品質管理部の営業活動とは?

品質管理部は常に社内で検査ばかり、ってそんなことはないですよね。会社の体制にもよりますが、クレーム対応でお客様と直接接したり、工場見学(視察)にいらっしゃった取引先(候補)のご案内をしたり、お客様と触れ合うことがあるはずです。

その中で、品質管理部が営業活動に参加できるのは取引先の工場視察です。普段はあまり指摘されないのですが、工場視察において非常にプラスの評価をされることがあります。それは「改善活動が継続的に行われているかどうか」という点です。

きちんと改善を行って、それをビフォーアフターで視覚的(つまり写真)で明確にする活動は品質管理部が出来る最高の営業活動です。

成果を見える化しよう!

対外的な営業活動を意識して成果を見える化すると社内にもいい影響で出てきます。その影響とは、今まで気になっていたけど言いにくかったこと、がいろいろなところから報告・相談されるようになるのです。

中には改善が難しいことも含まれますが、多くは「気づくことが難しい」ことだったりします。つまり、指摘さえしてもらえればすぐ改善していけるということです。このような感じでどんどん改善が進んでいくことになります。

ということで、初動はなかなか難しい面もあるとは思いますが、どんなに小さなことでもいいので改善したことをすぐわかるように掲示物や資料を作ってみてください!そしてそれをお客様はじめみなさんにアピールしていきましょう!

必ず「稼げる品質管理」に変わっていけるはずですよ!

どうしても初めの改善点が見つけられない、解決法が分からないという方は、是非メールでお問い合わせください。FQMサポートでは昨年も100件近い無料相談を受けて、半数以上を解決してきています。同一案件で2回のやりとりまでは無料ですのでお気軽にお問い合わせください。

以上、小橋博士でした!

簡単なはずのことでトラブルが絶えない

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

品質管理をしていると、原因は簡単なはずなのに、トラブルが絶えない!ということがありますよね。基本的なことなので、教科書的に「手洗いが不十分!」とか「ルールが守れていない!」とか、指摘することは簡単です。しかし、品管の仕事はトラブルをなくすこと。では、どうしたらいいでしょうか?

責めても改善には1mmも近づかない

この問題の原因はこうのはず!あなたが原因だ!よく見る光景です。そしてこれで問題が解決した事例を私は知りません。仕事上のトラブルの場合、相手がミスを認めることはかなりレアなケースです。つまり、あなたが責めれば責めるほど、相手は予想もつかないような言い訳をしてくることになります。品質管理に携わる方なら、身に覚えがあるのではないでしょうか?

ここで分かることは、相手を責めることで得ることは少しもない、という現実です。

簡単なことこそ難しい

ここでもう一度、おかれている状況を考えてみましょう。簡単なことはそもそも本当に簡単なのでしょうか?人は非常に頻繁に基本=簡単と思い込んでいます。しかし、ここがそもそも間違いなのです。基本は非常に大切ですが、なぜ大切なのでしょうか?それは、簡単で誰でも数回は出来るのですが、続けることが難しいからです。なので、あえて「基本」と称して継続することを促しているのです。品質管理で言えば、手袋の扱いや手洗いなどがこれに該当します。

食品工場と家庭の台所は似て非なるものですが、似ているがゆえに職場での基本が守れない現実があります。基本が守れないのか!と怒るのは簡単です。しかし、微妙な違いであるが故の難しさを受け入れていかない限り、進歩はありません。

基本を維持することの難しさを現場の作業者の皆さんと共有して、怒るのではなく、困難な課題に挑戦していく心構えを共有してください。

簡単なことこそ難しい、この視点・感覚こそ、作業者の皆さんと問題意識を共有する上で必要不可欠なだけでなく、絶えないトラブル根絶の唯一の道筋です。

以上、小橋博士でした!

品質管理体制の構築ー3つの柱ー

こんにちは!小橋博士です。

今日は取引拡大に向けてかかせない、品質管理体制の構築はどうしたらいいのか?というお話です。取引を増やしたのに利益が上がらない!抜き打ち検査で相当なロスが出ている!など、もっとうまくやれる方法があるはずじゃないの?とお考えの社長様に是非読んでいただきたいです。

食品工場で管理されるべき品質

食品工場に求められる品質は以下のようなものがあります。
・衛生(1)
・重量・長さ・入り数など、契約や法律の上で守るべき品質(2)
・生産性(2)
・消費者が実感する品質(味や見た目)(3)

商品を個別に包装して第三者に販売委託をするには、こちらに挙げた順番がそのまま実現すべき優先順位となります。そして、後ろに付けた数字ごとに必要な人材が異なります。品質管理体制構築の3本柱ですね!

衛生管理はどうしたらいいのか?

衛生管理については直感・勘・商売上の経験ではどうにもなりません。
衛生管理のできる人材を確保して指導を仰ぐ以外方法はないです。適合するのは、衛生管理経験者・(管理)栄養士です。少しイレギュラーですが、衛生管理経験者ではなくても、食品衛生管理者の資格要件を満たしている方(医師・歯科医師・薬剤師・獣医師、大学で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学のいずれかの学部を卒業した方、食品衛生管理者養成施設で教育を受けた方)であれば、十分に業務をこなす能力があります。

ただし、マニュアル等が整備された状態での管理業務と、何もないところから作り上げる能力は同じようで異なります。工場でのルールをきちんとくみ上げられるか、確認することが大切です。

工程管理はどうしたらいいのか?

上の品質一覧で(2)を付けた品質は、工程管理によって実現されます。こちらは工場長経験者やトヨタ式の生産管理経験者であれば大いに活躍してくれるはずです。さらに、改善の意識をもっている方であれば、肩書によらず活躍できると思います。

ただし、ある程度のところを超えるとそもそも問題解決が出来ない事態が発生します。その理由は科学的な知識がないと、食品の製造工程で発生する問題解決ができないからです。その場合は各種専門家派遣事業を利用して頂ければ、解決への道が開けるはずです。

商品開発はどうしたらいいのか?

(3)は商品開発の段階で実現すべき品質です。食品の商品開発は味覚や視覚等で伝わる品質と安全性すなわち衛生面での品質が求められます。衛生面は衛生管理担当者が行えますので、主に味覚・視覚、お得感などを考えられる方であれば商品開発はやっていけます。社長が衛生管理担当者の業務の一端として意識して手配すれば、極端な話誰でもOKです。

求められる性格は?

ここまでは主に能力面のお話でした。しかし、性格も非常に大切です。個人的には以下のような性格(視点)を持っている方を探して頂くことをお勧めいたします。

衛生管理者・・・安全性とコストのバランスを意識できる方が最も向いています。そして残念ながら、このような人材は少ないようです。立ち上げ時期はいろいろ入用なので、法令にのっとりつつ、創意工夫で改善できる方がうれしいですよね。

工程管理者・商品開発・・・工場の生産と試験のバランス感覚のある方が望ましいです。初めは試験したいことが山積みになりますが、それぞれにきちんと優先順位をつけられるかどうかがポイントです。

あとは全体に共通することですが、コミュニケーションが取れて作業者全員に敬意をもって接することが出来る方が望ましいです。

以上、自前で整えるとかなりハードルが高いですよね。特に人を雇うのはなかなか決断がいることだと思います。そんな場合は是非、ご相談ください。FQMサポートが必要な時に必要な分だけお手伝いをさせて頂きます。

小橋博士はなんと!
・衛生管理経験者・食品衛生管理者の要件を満たす農芸化学卒業
・工程管理経験者・改善実績も多数
・商品開発経験者・お取引先からおほめ頂いた商品を2つも開発しています
なにより、経営経験がありますので、コストも常に意識しています。
お困りの際は是非お声かけ頂ければと思います。

以上、小橋博士でした!

食品製造の品質管理のポイント

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

前回の記事は、改善案の実行には人のマネージメントが不可欠、という内容でした。今回の記事はそもそも改善案の立案に不可欠なポイントです!問題があることは認識していても、どのように改善への糸口をつかむのか、ここがわからないと始まらないですよね。
改善策立案と実行の二つが合わさることで、ようやく改善できます。品質管理は大変ですが、成功すれば喜びもひとしお!ということで、今回と前回の記事が皆さんの参考になれば幸いです。

食品製造業の特徴

食品製造業の特徴は、鍋釜一つあれば始められる、と言われるほどの敷居の低さにあります。食品製造業の創業者で製造ラインのエンジニアや食品関連の研究者出身の方は本当にごく少数です。これに起因して、工業化・大規模化の訓練を受けた人材が所属している割合も非常に少ないようです。

また、社会的な要請から、品質管理=衛生管理となりがちなことも特徴の一つです。随所で数値管理はしているのですが、そもそも統計的な品質管理と衛生管理は別物ですので、衛生管理が専門の方が統計的品質管理に挑戦しているという話はあまり聞きません。

以上から、食品製造業では、衛生管理担当者がいても、よほど大規模な工場でない限り、品質を管理し改善していく担当者がいることは非常にまれです。その結果として、ムリ・ムダ・ムラだけでなく、管理上の不備が放置されていることが多いようです。専門家がいないことが多いので、そもそも不備に気づけないという構造的な問題だと感じています。

品質管理のポイントは「測る」ことから!

管理上の不備とは、そもそもばらつきを計測するためのチェック作業がないことを指しています。例えば「パンの発酵がうまくいかない、いつもどおり湿度は70%で温度は30度なのに」という話があったとします。原因はなんでしょうか?

このような問題の原因を探るためには、確認していなかったことを確認して、うまくいくときといかないときの違いを見つけることです。そうです、とにかくばらついているかも?と思ったことを片っ端から測っていくことが品質管理への第一歩になります。

上の例だと
・酵母1gの中に生きているのはどのくらいいるのか?
・材料はしっかり混ざっているか?
・捏ねるときの温度変化はどうか?
・測定した湿度・温度はどこの温度なのか?ムラはないのか?(部屋の温度などは場所によって結構違います)
・原材料の成分は一緒なのか?(このケースだと小麦粉の成分、グルテンの含量などです)
などなど、いろいろ出てきます。それぞれについて、どのようにしたらばらつきを測定できるのかをみんなで考えましょう。思いつかないときは私はじめ専門家の意見を聞いてみるのも有効です。知らないことはいくら頭をひねっても出てこないので。

このようにして、地道に問題ごとに測定すべき事柄を蓄積していきましょう。原因となるばらつきが見つかれば、品質を安定させる「品質管理」への道が開けてくるはずです!ここまでやって、はじめて、稼げる品質管理になれます。道は険しいですがその分やりがいはあります。頑張っていきましょう!

以上、小橋博士でした。

品質管理で大切なのは統計より現場の信頼

こんにちは!小橋博士です。

品質管理の方とお話しすると、「いくら言ってもちゃんとやってくれない」という、悲しい事態をよく耳にします。品質管理担当者と工場の方の意思疎通はなぜ測れないのでしょうか?今回は人の心理とマネージメントという視点で考えて行きます。

「正しいこと」は通用しない

改善案を実行する場合、大抵の場合、誰かの業務が増えます。大げさに言うと、誰かの犠牲のもとに、全体の利益を追求することになる、ともいえます。そして多くの場合、犠牲になる誰かにとって、被害>個人に分配される利益、です。

さらに、お願いに回っている品質管理担当者にとって、改善案の実行(と成功)は個人的な利益が大きいとも思われます。そうです、お願いされる相手にとっては「なんで私があなたのために犠牲にならないといけないのですか?」と思われるのです。

このように、いくら品質管理担当者がひたすら会社のことを思って統計的に「正しいこと」を言っても、個人的な信頼関係なくして改善案はうまくいきにくいのです(若い会社で誰も気づいていないことであればスムーズに行きますよ!でもそれは例外といえるくらい、改善案はスムーズに行かないのです)。

小さな改善実現で信頼を!

個人的信頼関係といっても、品質管理担当者になる方々は大抵生まじめで、元気で快活な営業さんのように飲みニケーションで信頼関係を築くのは難しい方が多いですよね。ではどのように信頼関係を構築したらいいのでしょうか?

それは、改善に関わる方全員が、提案者に関わることによってメリットを受けられるようにすることです。この際、会社の利益があがればいずれ還元される、という大きい話ではだめです。仕事が楽になった、仕事が楽しくなった、という目の前のことでなければ共感は得られません。

このように理想を掲げるのは楽ちんで、実行するのは難しいですよね。ですが、結局は心構えの問題です。みんなに気持ちよく仕事をしてほしい、そのためにはどうしたらいいのか?機会を逃さず現場の方とコミュニケーションをとって誰がどのような価値観を持って仕事をしているのか、見極めていくことが大切です。

そして、細かい改善をいとわず、ISO会議なども利用して作業の負担軽減に努めていきましょう。細かいことは、軋轢が生まれにくく、改善の実行も容易なことが多いです。そのようなところからコツコツ作業者の方の利益を実現して信頼を得ていくことが、数字に表れるような大きな改善の実行へのステップになります。

千里の道も一歩から!特に若い品質管理担当者の方には、焦らず作業者個人に目を向けた小さな改善に地道に取り組んでいっていただきたいです。
大きな改善への道筋は、なかなか遠いのですが地道に頑張りましょう。

以上、小橋博士でした!