設備機器はトータルコストで判断を!

初期投資を抑える、このフレーズは多くの人から口を酸っぱくして言われることだと思います。
起業系のセミナーでもかなり頻繁に言われますよね。
もちろん、初期投資を抑えることは非常に重要です。
とはいえ、現在の日本においてはメンテナンス費用で利益を出す会社が増えてきていることに注意が必要です。
購入している厨房器具が壊れたとして、すぐに買い替えを検討しますか?しませんよね?
そこはもう、ビジネスチャンスになっています。いわゆるゆでカエル戦略ですね。
カエルは熱湯に入れるとすぐ飛び出ますが、水からゆでていくと熱くなったことが分からずに茹で上がるまで気づかないとかいうあれです。

本当に大事なのは、トータルコスト

簡単のためにご飯を炊く炊飯器のことを考えてみましょう。味や保存性など、コスト以外の点は全て同じだと仮定します。
5万円で1升炊くのに100円かかる炊飯器と、10万円で1升炊くのに50円かかる炊飯器、どちらがお得でしょうか?
1000升を超えて使うなら10万円の方がお得ですよね。
単純な光熱費だと、非常に分かりやすいです。ところが、現実には、必要な光熱費はごまかしもあります。
水温が高い夏を基準に測定した場合と、平均気温を基に測定した場合では違いがでるのはお分かりいただけると思います。
実際にはこれに、修理頻度・その際の費用も掛かってきます。
お店を長く続ける前提であれば、当然、お米1升を炊くのに実際いくらかかったのか、が大事になります。
表現を変えると、お米を炊くために5年・10年でいくらつかったのか、ということです。

例外は極力なくしましょう

従業員は意外と会社のコスト感覚に敏感です。普段から、コンセプト実現・強化のためにコストを削減しよう!削減分をお客様のために使おう!と言っていても、効果の不明な設備投資があると途端に士気に影響が出ます。判断に困ったときは、従業員に分かりやすく投資の理由を説明できるのか?という点を考えてみてください。このくらいいいじゃないか・・・、という感覚で例外を作ってしまうことで、お店のコンセプトに向き合う姿勢がぶれていきます。よりよいお店作りのためにも、例外は極力なくしましょう。コンセプトに向き合えば、自然とトータルコストで比較することになります。5年10年のスパンで考えたときに、トータルコストがどうなるのか、調査は骨が折れますが、お店のために是非しっかり調べてから、機器の選定をしてください。

手狭なお店で客数を増やすには?

手狭なお店で客数を増やすにはどうしたらいいでしょうか?1日の客数は = 客席数x稼働率x回転数で計算されます。客席数を増やすことは基本的に難しいと思われるので、客席の稼働率と回転数を中心に考えてみましょう。

稼働率を上げるには?

客席の稼働率は満席時に何人のお客様が着席されているか、という割合です。100%になることはまずありません。というのも、二人掛けの席に1名で座っていることや、4人掛けのテーブルで2~3名ということもありますよね。

手狭なお店の稼働率は基本的に高いとは思いますが、テーブル席があるような場合は相席しやすいトレーを使用するなど工夫が必要です。また、来店されるお客様のパターンを見極めて、二人掛けや4人掛けの席をうまく作ることも有効な対策です。

回転数を上げるには?

回転数に影響を与えるのは お店側が席の準備・料理の提供にかける時間 と お客様のお食事の時間 です。お客様のランチタイム・ディナータイムはおおよそ決まっています。その時間の中で回転数をあげるには、お店側の持ち時間を極力減らす必要があります。

特に提供時間に配慮を!

ピークタイム、つまり「書き入れ時」の収入を増やすためには料理の提供時間の短縮が効果的です。立地等にもよりますが、提供時間の短縮は適切な回転率をたもち、満席によるお客様の流出を防止します。とあるラーメン店では提供時間を10分から6分へ短縮したところ、ランチタイムの回転率が5回転から7.5回転へ増加し、売上も15%増加しました。特にビジネス街など、お急ぎのお客様の利用が見込めるところでは速さだけで、立派なコンセプトになります。

回転数が多ければ多いほど、時間短縮の効果は大きいのですが、そのようなお店では複数名で調理していることがほとんどだと思います。複数名で作業をする場合は、必ずすべてをマニュアル化し、1秒でも短縮するという気持ちで作業を詰めることが有効です。全ての材料・調理器具は必ず同じ場所・同じ向きで置くように徹底します。そうすることで、無意識のうちに動きが止まることを防止します。手を何度も拭かなくて済むように適切にトングの配置や分業をします。極端な例ですが、1つの料理で10回も手を拭く動作が入るようでは、それだけで30秒程度ロスしています。また、布巾自体の衛生度はどんどん落ちていきますので、衛生面で考えてもよくありません。このような作業全体を効率化するときは、思い切ってストップウォッチで調理の作業とそれぞれの所要時間の最大・最小・平均を出すことをお勧めします。

実際に時間と向き合うことでいろいろなアイデアや改善点が出てくるものです。

基本的には稼働率・回転数ともにあげていくべきものですが、お店のコンセプトに照らし合わせてふさわしくないのであれば、付加価値を訴求する。意味のないことは徹底的に効率すべきですが、意味のあることは非効率でもかまいません。客席の稼働状態一つとっても、お店のコンセプトに照らし合わせつつ、効率化していくことが重要です。

料理の提供温度

飲食店にとって、料理の最適な提供温度は何度でしょうか?多くのお店では、料理ごとに美味しく感じる温度を意識しながら提供されています。基本的にお客様は料理を冷ますことはできても温めることはできません。なので、もっともおいしい温度より上に設定して提供することが一般的です。
ですが、お客様のニーズはどうなのでしょうか?少し考えてみましょう。

食事にかかる時間を重視する人の存在

料理を提供するまでの時間が大事だ、というのは飲食業界に携わっていれば常識ですね。実際に日本政策金融公庫の調査などでもそれは裏付けられています(お店選びの基準調査はこちら)。このように、ランチタイムは料理の提供時間を重視する方が非常に多いため、リサーチでも項目として漏れていますが、実態は「食事にかかる合計時間」で判断していると推察されますその推測を裏付けるように生活情報リサーチサイトのTEPORE様の調査でもおよそ1割の方が外食を使う理由として手早く食事を済ませたいから、という理由をあげています(TEPORE 「外食」について)。

急いでいるときに熱いものが出てきたら?

一方で、お店の側は提供時間には気を遣うものの、やはり美味しいものを食べてもらいたい気持ちが強いようです。直接裏付けるデータはないのですが、一部例外を除いて基本的に熱め~適温での提供を受けることが多いですよね。ですが、その気持ちに行き過ぎを感じる場合もあります。汁物などでは特にそうですが、熱い状態であればタイミング次第で調整できるでしょう?と言わんばかりに激熱の状態で提供されるお店も身近に結構あります。チェーン店でもありますよね。

激熱の味噌汁・・・急いでいても残すのは抵抗を感じるのではないでしょうか?実際に、少し古いデータですが、生活情報リサーチサイトのアンケート調査でおよそ65%以上の方が食べ残しをすることに抵抗感を感じているそうです(参照:TEPORE 大人の食学 食べ残し)。

さて、ここで少し考えていただきたいのですが、あなたのお店のお客様は短時間で食事を済まされる方の割合はどの程度でしょうか?
それらのお客様は熱めに提供している汁物を残す割合は、他のお客様と違いませんか?
もし特定の行動(ここでは急いで食べる)を取る方が食べ残しをされるということは、そのサービスに改善点があるということですよね。
それも、残すことに後ろめたさを感じる日本人相手ならなおさらです。

うまい!はやい!やすい!のように、時間に追われる働くオトコ達を応援するお店で、まさかの激熱落とし穴・・・などということが無いように、利用シーンはよく考えて提供温度を決定して頂ければと思います。

さて、こうして振り返ると、麺の硬さ・味の濃さを選べるラーメン店はあっても、提供温度を選べるお店はあまり見かけません。もしかしたら新しい差別化のポイントになるかもしれませんね。

原価率の下げ方(飲食店向け)

原価率を下げるためにはどうしたらいいでしょうか?原価率は基本的な数字なので商売をされている方はよくご存じだと思います。
原価÷売価なので、原価が変われば原価率が変わる、というのは普通の見方ですね。
見方を変えると売価を変えることでも原価率は変わるのです。つまり売価をあげることでも原価率は下がるのです。
今日はこのように様々な角度から原価率を下げる方法を考えていきます。

飲食店での原価率に関わるもの

原価率に関わるものをはっきりさせることで、どうしたら下げられるのか、見えてきます。
大まかにいうと原価率は原価÷売価ですよね。
売価は単純ですので、問題は原価に何を含むか、です。
原価の計算では、大きな工場向けですと人件費や消耗品費等の経費が参入されたりします。しかし、個人店ではそれらをメニュー1食ごとに分解して考えるのはほぼ不可能です。よって固定費となる場合がほとんどです。なので細かいことは考えずに原材料費の比率と思ってください。銀行さんとのやりとりでも、どのように考えて計算したかを説明すれば問題なく話が通じます。

そして、原価率にはメニュー1品当たりの原価率とお店全体の原価率が存在します。経営者にとって大切なのは、お店全体の原価率です。
つまり、いくらの売上を作るために、原材料費をいくら使ったのか?ということです。

原価率を下げる方法は大きく二つある!

経営的にはお店全体の原価率が大切なので、原価率を下げる方法は以下のようにまとまります。
・原価を下げる
 仕入れ価格を下げる
 ロス・廃棄を減らす
 原価を意識したメニュー開発・調理を行う(後日記事を書く予定です)

・粗利を上げる
 売価を上げる
 クロスABC分析などを行い、粗利に貢献しているメニューの販促をしたり、メニューの改廃を行う(後日記事を書く予定です)

お店としてすぐできるのは「原価率の低いメニューを積極的に売る」ことです。お客様のニーズも考慮しながら効果的なキャンペーンを行いましょう。

一般的に、お店全体の原価率の目標は30%ですが、もちろんそれ以上に設定して成功している飲食店も多いです。高原価率戦術は既に広く知られていますし、その先には中食との戦いも待っています。まずは基本を把握して、そこから自店のコンセプトをよく見つめなおしてください。

飲食店のコスト比率

飲食店の主要なコストと目指すべき比率を教えてほしい、という問い合わせを受けてまとめた文章です。これから飲食店を開業する、もしくはすでに開業しているけれど業績を改善したいという経営者様向けの記事となっています。

品質管理とはかけ離れていますが、個人店の品質管理・改善を行う上では避けて通れない数値です。ちょっと前から流行っている高原価戦略と一見相いれないようですが、基本はあくまでこちらの通りです。基本の無い応用は脆いので、古い!と言わずに是非ご一読ください。

まずは何から決めるのか?

実はコスト比率を決める前に、決めるべきことがあります。それは1年間の目標利益です。目標利益を決めるためには利回りを意識してください。利回りは投資額に対して、1年でどれだけの稼ぎがあったのか?という数字です。

1年間の利益÷投資額

で計算します。庶民感覚で言うと、銀行の利息みたいなものですね。一般的に、企業がお金を借りるときは利回りが20%を超える、つまり5年以内に投資額以上の利益を上げることが求められます。日本政策金融公庫が苦しい企業に融資する場合の特例の基準ですら、利回りは最低10%です(政治主導の緊急措置は除く)。

このような事情があるため、どうしても高い数字がひねり出せなかったとしても最低は利回り20%、改善目標の場合は30%以上、開業時の目標であれば40%を設定してください。

設定した利回りと投資額から、必要な売上を逆算することで健全な経営計画が立案できます。
具体的には 利益+経費=売上 で計算します。
ここまで進むと、既に物件が決まっているお店であれば、家賃比率が自動的に出てしまいます。

基本は主要コスト70%以下

飲食店の主要コストは、原材料費・人件費・家賃です。流行りの高原価戦略では、インパクトを強くするために原材料費が40%を超えている!等と、言われていますが、主要経費の合計はやはり70%以下に抑えられています。というのも、主要なコスト以外もやはりなんだかんだで10%程度かかりますし、利益を上げないといけないからです。そもそも、売上高経費率が100%を超えては成り立たないのは考えるまでもないことです。
人並み(といっても、経営者基準なので尋常じゃないレベルですよ!)の努力では主要なコストを70%以下に抑えざるを得なかった、という解釈が主要コスト70%以下の意味するところだと考えてください。

高原価戦略が成り立つ理由

その上で、%と絶対的な額を入れ替えて考えることで、常識を打ち破っているのが近年の成功している業態です。
乱暴に言うと、その場所で普通に売上げられる額の2倍を売上げれば、家賃比率半分、人が2倍効率的に動けば人件費半分だよね?という発想です。これだけでざっくり20%浮きます。その浮いた20%を原材料費につぎこむ、というやり方です。売上2倍で家賃比率半分は出来たとしても、人の効率は倍まではなかなか難しいので、実際には様々なところで効率化が進んでいるのです。この効率化は売上対比のコスト比率だけではありません。宣伝広告等の集客の効率も段違いです。これはその日まで積み上げてきた努力とお店の評価のなせる業と言えるでしょう。

工夫が肝心

上記の計算結果を手にして、「よし!やるぞ!」となる方は稀です。「は?これっぽっちの人件費と原材料費で目標の売上が立つわけないじゃん!」となってしまうことが多いです。ですが、この壁を乗り越えるかどうかが、お店が今後末永く繁盛するかの分かれ目です。メニュー構成や人員戦略など、工夫をこらしてなんとか上記数値に当てはまるコスト配分を実現してください。

FQMサポートでは飲食店向けのメニュー開発・コスト削減のお手伝いも実施しております。「あ!そういうことだったんだ!」というご感想を頂くことも多いので、興味のある方は是非コンサルティングを受けてみてください。

価格決定のポイント

飲食店経営の方に、何度か価格決定のポイントのお問い合わせを頂きましたのでまとめておきます。

お客様の気になるポイント

お客様が気になる価格のポイントの1つは最高額と最低額であることが知られています。たまたま入ったラーメン店などでも、特製ラーメンの金額と最小構成のラーメンの金額は意外と覚えていますよね?でも、間の価格のラーメンの値段は意外と出てきにくいものです。

2つ目は看板メニューの値段です。こちらはしっかり記憶に残ります。さすが看板メニューといったところでしょうか。価格も特別扱いされます。

3つ目はメニュー数の多い価格帯です。メニューを選ぶときにたくさん目にするので、お店の実質的な価格帯として認識されやすいです。

逆に特に意味がないのは細かい価格設定です。例えば580円、640円、660円、680円、780円などのラインナップがあったとして、お客様は真ん中3つを価格で選ぶでしょうか?少しでも安く提供したい、という気持ちは分かりますが、そのコンセプトは580円のメニューで実現してあるのではないでしょうか?分かりやすい価格で食べたいものを選びやすくする心遣いも必要だと思います。端数にはこだわらず、分かりやすさ優先で680円にまとめて、580円、680円、780円の3種類にするべきです。

複数の料理を提供する業種業態ではお会計も重要!

個別のメニューの料金だけでなく、実際にいくら支払ったのか、も当然強く記憶に残ります。原材料の値上がりによる価格変更の際には、お客様の支払額への影響も考慮するといいでしょう。

では実際にどう決めたらいいの?

十円単位については、よく知られたマジックプライスを導入することをお勧めします。日本では縁起の影響で苦労につながる9よりも末広がりの8を選んできましたが、若者向けのお店では特に気にする必要はないです。~90円とすることで、少しでもお店のコンセプトを強化する原資にさせて頂くべきです。高齢者の中にはまだ気にされる方がいるようです。ターゲットによっては~80円としておく方が無難と言えます。とはいえ、串揚げなど単価が安いものはこの限りではありません。その場合は平均的な食事量男性で450gを参考に、予算で決定する方法が分かりやすいです。平均的な注文パターン・原価を想定して、適正な利益率が確保できるようにしましょう。

同種のメニュー内の価格差は最高価格を最低価格の2倍以内に収めるべきだと言われています。あまりにかけ離れた価格はコンセプトがぶれているとも考えられます。本当にそのメニューが必要か、コンセプトに立ち返って吟味しなおしてみてください。この2倍以内にとらわれず、できるだけ価格帯は広がらないようにしましょう。あまり広い価格帯では、お客様がお店を安いのか標準的なのか、高めなのか、評価がしにくくなり敷居があがってしまいます。

最後に、価格は一度決定すると値上げは難しくなります。原価と利益率だけを考えずに、高めの値付けをしましょう。その代わりに、サービス・品質でお店のコンセプトを実現していく!というつもりで決定する方が、のちのち修正が効きやすいです。くれぐれも安売りは注意です。

食材在庫の管理

食品の在庫管理はどのようにやるとスムーズにできるでしょうか?このようなお問い合わせを飲食店などの経営者の方から頂くことがあります。これについては、そもそも品切れをどうとらえるか?という問題に答えを出さないといけません。

看板メニュー以外の品切れは許容しましょう

個人のお店が大手と同等の戦略をとることは得策ではありません。日本のコンビニなどは品切れを起こすことは最大のタブーとされていますが、個人店では品切れ上等でいくべきです。

ただし、看板メニューの品切れは極力避けてください。特にきちんと看板メニューの打ち出しをしているお店では注意すべき点です。というのも、新規のお客様はその看板メニューに惹かれてやってきているからです。

看板メニュー以外については、「すみません、今日はもう~~~は終わっちゃんたんです」でも特に問題はありません。きちんと差別化してアピールできているなら、そもそも看板以外のメニューは店内で初めて知るケースがほとんどです。それに、上記のフレーズは、何十年も続くような繁盛店であってもよく聞きます。そして代わりのメニューをお勧めして頂けることも多いですよね。

とはいえ、焼き鳥屋に入ったのに、焼き鳥が手羽先しかない、という事態に遭遇したらどう感じるでしょうか?閉店間近であれば、仕方ないと感じるかもしれませんが、開店直後だとさすがに・・・、と感じますよね。大事なのは選択の余地が残っていることです。

過剰な在庫は避ける

過剰な在庫は鮮度の低下を招くだけではありません。あまり指摘されないことですが、過剰、つまり普段以上の在庫を抱えるということは、店内のスペースの使い方が変わるということでもあります。普段と違う事態は必ず作業性の低下をもたらします。正確性も下がります。少し価格差が生じるからと言ってすぐに買いだめに走るような行為は、他の部分でロスが出がちです。お店のコンセプトを思い出してください。その実現に、適正な在庫量はどの程度でしょうか?コンセプトを重視した場合、多くのお店で過剰在庫がNGであることは明らかです。過剰な在庫は避けましょう。ちなみに、冷凍食品であっても品質の低下は起こります。詳細は長くなるうえに物理の話まで出てきてしまうので省きます。冷凍食品は食材全体の在庫量調整には便利なのですが、少しでも高品質な料理を提供するためには、必要最低限の在庫を心掛けるべきです。

発注間隔と在庫量を決めておく

全ての作業が自動的に決定できるくらい、システム化が進んでいればいいのですが、大手のフランチャイズに加入でもしていない限り、難しいことですよね。オーダーから計算するのもいいのですが、現実にはロスや計算間違いなども発生します。そこで、経験的な感覚で構わないので、食材ごとに発注間隔と在庫量を決めておきましょう。その際に、予想発注量と店長への報告をお願いする過大・過少発注量を決めておきます。在庫の管理は店長の責任ではありますが、食材の利用が予想を外れていて発注量が多すぎたり少なすぎる場合は教えてもらうようにしましょう。また、調理担当にも報告をお願いする最低在庫量は設定しておくべきです。店長も人の子です。ミスはつきものですので、お店全体でフォローできる仕組みを組み込んでおくことをお勧めします。

品切れの時の対応を決めておく

品切れを許容した場合、前述の最低在庫量を低めに設定できます。これは食材の鮮度が向上することも意味します。社会問題として一部に関心のあるフードロス対策にもなるため、お店のコンセプトによっては逆にウリのひとつになるでしょう。ただし、冷たく「本日は終了しました」だけでは、また来店しようという気持ちはそがれてしまいます。品切れした場合のお詫びの仕方、代わりのメニューをお勧めすることなどは必要でしょう。その際、鮮度を意識していることが伝わるようにお勧めすることもポイントです。品切れ=お店の在庫管理が出来てない・お店の都合、というよりも、品切れ=常に新鮮なものが提供されている、など、ポジティブに伝わるように注意しましょう。とはいえ、全てのメニューで品切れが許容できるわけではありません。看板料理の品切れはフォローできない顧客離れにつながりかねません。お客様がその料理を食べるために来店されているのに、無い、では済まないということです。あくまで許容できるのは、看板以外の飽きさせないためのメニュー群です。また、品切れだらけになることも極力避けるべきです。お店の方針で当日使い切りを目指すのであれば、閉店時間を「ただし、品切れになり次第閉店」という、スープがなくなり次第閉店のラーメン店のように付け加えておくべきでしょう。欠品が増えてきたら、入店時にその胸をアナウンスすることも必要です。

食材の先入先出は徹底する

発注のルールを決めるのは、在庫金額を適正に保つためでもありますが、鮮度管理のためでもあります。食材の先入先出、つまり、古いものから先に使う、というのを徹底することも大切です。どうせ食材の管理はしなければいけないことです。是非お客様に喜んでいただけるよう、食材は先入先出を徹底し、常に新鮮なものを使えるようにしましょう。

栄養成分表示をするために必要なこと

栄養成分表示をするために必要なことは何でしょうか?当たり前のようですが、栄養成分表示をするためには、原材料それぞれの使用量をきちんと決めることが必要です。

今日はにらが高くてニンジンが安いから、ニンジンを多めにしよう、というのはありえません。
レシピさえ確定していれば比較的簡単に栄養成分表示を行うことは可能です。
何より、レシピを確定することは繁盛にもつながる大切なことです。本日は栄養成分表示に必要なことと、なぜそれが繁盛につながるのか、考えていきます。

栄養成分表示は必要?

栄養成分表示を望む消費者の声はそれなりに大きいにもかかわらず、個人店などではほぼ表示は見かけません。ですが、近い将来どこかで確実に表示義務化に向けて動き始めます。実際に、これまで何度も飲食店での栄養成分表示について話し合いがされてきています。ということで、個人店では栄養成分表示は義務ではないものの、実際に表示を行うには相応の時間が必要になるため、栄養成分表示のために必要なことは把握しておくべきです。また、包装済みの商品については2020年に表示が義務化されます。

栄養成分表示に必要なこととは?

具体的にはレシピと、それを忠実に守れる職場環境が必要です。
レシピは比較的短期間で準備できますが、職場環境は一種の文化ですので、それなりの時間はかかります。
今の職場環境にもよりますが、準備期間が必要であることを考えると、栄養成分表示に備えて準備しておくこと、が必要なことと言えるでしょう。

また、検査機関に出して栄養成分値を実験的に求める場合は1サンプル当たり5万ほどかかります。あまり突っ込まれることはないのですが、原材料の産地や季節ごとの変動を考えると、法令順守の視点では複数回行う必要があります。元研究職の私から見ると非常にナンセンスな出費です(理由について知りたい場合はお問い合わせください)。よほど大量に生産するものでないかぎり、標準成分表からの計算値で十分です。

栄養成分表示の準備が繁盛につながる理由

一言でいうと、ポーション管理の徹底につきます。
また、付随的に、従業員の意識が良い方向に向くこともあげられます。
ポーション管理は元々はコスト管理のための手法ですが、お客様の満足度を常に一定に保つ効果もあります。
ポーション管理が出来ていないと、食事の品質がばらつき、悪い時の印象はいい時の2倍のインパクトを持つ、という心理学的傾向から、お客様が離れる原因となることが知られています。
このように、コスト管理の徹底から派生するお店のクオリティ向上効果と、お客様の満足度を一定に保つ効果から、栄養成分表示をにらんでレシピの徹底を図ることは繁盛につながるのです。

栄養成分自体はよくわからないけど、レシピ徹底なら出来る!という店主様も多いと思います。
是非、レシピの徹底を行ってみてください。

DMは有効か?

DMによる告知はどの程度有効か?というお問い合わせを受けましたので、以前調査した結果をまとめます。
工場の品質管理だけではなく、このようなお問い合わせにつきましても調査のノウハウを活かしてお答えできますので、たまたまこの記事をご覧になった悩めるそこのあなた!も是非無料相談をご活用くださいませ。

参考にしたのは以下の資料です。
・日本政策金融公庫 経営Q&A 売り上げアップにつながるチラシ・DM作成術(2009年2月)
・JDMA 一般社団法人日本ダイレクトメール協会 DMメディア実態調査 2015 ←こちらは名前が長いので以降DM協会と略称を使用します。

DMの開封率とレスポンス率

DMの本質はお知らせです。お知らせである以上、見てもらわないことには始まりません。そこで大切なのは開封してもらえたか?そのあと行動を起こしてもらえたか?の2点です。

まずは開封率から。開封率は開封して読むことまでを含みます。
ハガキ等郵便で送付するもの 80.9% (2015年DM協会調べ)
電子メール   PC受信  63.6% (2008年株式会社アイシェア調べ 対象:同社会員)
電子メール   携帯受信  61.6% (2008年株式会社アイシェア調べ 対象:同社会員)
意外と目は通してくれているのですね。ただし、電子メールのデータは元々メール転送サービス利用者限定で母集団が著しく偏っている上に古いデータですので、あくまで参考程度にしてください。ともあれ、過半数は目を通してくれると考えていいでしょう。

次にレスポンス率。これはDMを受けて何か行動を起こしてくれた人の割合です。2015年のDM協会による調査以前は、ネットで調べる、話題にする、など間接的な行動はレスポンス率に含めていなかったようです。
レスポンス率は日本政策金融公庫・DM協会ともに、古い定義で平均5%程度のようです。間接的な行動を含めると約15%まで上昇します。こちらの率は送付した人全体に対する割合なので、電子メール経由だと若干落ちることが予想されます。とはいえ、郵送は既存顧客向けが多く、電子メールは不特定多数向けが多いことが予想される(データには示されていない)ので、媒体問わず以下の数値が参考になりそうです。
平均的なレスポンス率
DM・チラシ(不特定多数) 0.5~1.0%
DM・チラシ(既存顧客)  5.0~15.0%

ただし、これには重大な視点が抜けています。自店の商圏向けかどうかです。商圏外にDMを配ったとしてもレスポンス率は著しく低いことは明白です。商圏内の配布対象者が何名で、配布のためのコストがいくらで、予想される売上がいくらなのか、しっかり予想を立ててDMを活用することが大切です。このように効果を検証しないで「とりあえずチラシ・DMを配布しよう!」というのは広告費の浪費につながりかねません。というよりも、ほぼ確実に浪費するといえるでしょう。既存顧客向けですらざっくり1割程度しか来店を促せないのですから、DMの配布コスト(もちろん、製作費コミですよ!)が一人100円だとすると、一人来店していただくのに10倍の1000円ほどかかる計算になります。商圏外・新規見込み客が入ると予算はさらに膨らみます。直感的にも戦略が必要なのが感じてい頂けるのではないでしょうか?
注意が必要であるとはいえ、これだけのレスポンスが期待できる点は評価すべきでしょう。
是非DM等を有効活用して、売上アップに役立ててください!

以上、小橋博士でした。

交差感染とアレルゲンのコンタミ

衛生管理のレベルアップを図るうえで難しいのは、交差感染とアレルゲンのコンタミに対する教育と徹底です。品質管理担当の経歴が長い方でも、指摘されれば知ってはいるものの、きちんと理解しておられる方は少ないようです。

交差感染とアレルゲンのコンタミって何?

交差感染は主に食中毒菌、コンタミについては主にアレルゲンについて使われる言葉ですが、共通するのは「意図しない混入」であることです。よくあるのは

・違う作業に移る前に行う洗浄が不十分
・作業の途中で生もの・アレルゲンに触ってしまったまま、別の作業を継続

の2点です。食品だと想像しにくいのですが、病原菌等を含む生ものやアレルゲンを含む原材料・仕掛品を青いインクだと思ってください。両者を含まないものは白いインクだとします。青いインクを触った手で白いインクを扱う作業をしたらどうなるでしょうか?青が微量とはいえ、混ざりそうですよね?このような状況が交差感染やアレルゲンのコンタミが発生する状況です。

白色の商品として売りだしたのに、青が混ざったような色だったら、お客様はどう思うでしょうか?クレームの原因になりますよね。交差感染やアレルゲンのコンタミの場合は見た目では分かりませんが、「病気の発症」という形で表れてしまいます。

地道な教育とラインの見直しを!

交差感染とコンタミは非常に大きな問題ですが、食品工場での最大の問題は「ということで、交差感染やコンタミを発生させないように気を付けて作業してください」で終わってしまうところです。

なぜ問題なのでしょうか?

上に例として挙げたインクの事例のように、目に見えるものなら報告がきます。しかし、病原菌もアレルゲンも目には見えません。また、基本的に作業者の知識・意識は欠乏しがちです。実感がないものは話としては聞けても、対応するのは難しいのです。これが、いくら教育を繰り返しても交差感染・コンタミの頻度が減らない理由です。

このような事情から、最大の対策は交差感染・コンタミが発生しないライン運営です。教育においても、最大の力点は「交差感染等を防ぐルールが守りにくかったら報告すること」です。

ここでも、作業者の努力やモラルに依存することはあまり得策ではありません。品質管理のレベルアップのためには、仕組みそのものを改善していくことがもっとも有効です。

それでも交差感染やコンタミが起こってしまうんです!みんな気を付けているはずなのに・・・というお悩みをお持ちの担当者様は是非、メールでお問い合わせください。工場を拝見すればすぐに原因特定できますので。

以上、小橋博士でした。