飲食店の主要なコストと目指すべき比率を教えてほしい、という問い合わせを受けてまとめた文章です。これから飲食店を開業する、もしくはすでに開業しているけれど業績を改善したいという経営者様向けの記事となっています。
品質管理とはかけ離れていますが、個人店の品質管理・改善を行う上では避けて通れない数値です。ちょっと前から流行っている高原価戦略と一見相いれないようですが、基本はあくまでこちらの通りです。基本の無い応用は脆いので、古い!と言わずに是非ご一読ください。
まずは何から決めるのか?
実はコスト比率を決める前に、決めるべきことがあります。それは1年間の目標利益です。目標利益を決めるためには利回りを意識してください。利回りは投資額に対して、1年でどれだけの稼ぎがあったのか?という数字です。
1年間の利益÷投資額
で計算します。庶民感覚で言うと、銀行の利息みたいなものですね。一般的に、企業がお金を借りるときは利回りが20%を超える、つまり5年以内に投資額以上の利益を上げることが求められます。日本政策金融公庫が苦しい企業に融資する場合の特例の基準ですら、利回りは最低10%です(政治主導の緊急措置は除く)。
このような事情があるため、どうしても高い数字がひねり出せなかったとしても最低は利回り20%、改善目標の場合は30%以上、開業時の目標であれば40%を設定してください。
設定した利回りと投資額から、必要な売上を逆算することで健全な経営計画が立案できます。
具体的には 利益+経費=売上 で計算します。
ここまで進むと、既に物件が決まっているお店であれば、家賃比率が自動的に出てしまいます。
基本は主要コスト70%以下
飲食店の主要コストは、原材料費・人件費・家賃です。流行りの高原価戦略では、インパクトを強くするために原材料費が40%を超えている!等と、言われていますが、主要経費の合計はやはり70%以下に抑えられています。というのも、主要なコスト以外もやはりなんだかんだで10%程度かかりますし、利益を上げないといけないからです。そもそも、売上高経費率が100%を超えては成り立たないのは考えるまでもないことです。
人並み(といっても、経営者基準なので尋常じゃないレベルですよ!)の努力では主要なコストを70%以下に抑えざるを得なかった、という解釈が主要コスト70%以下の意味するところだと考えてください。
高原価戦略が成り立つ理由
その上で、%と絶対的な額を入れ替えて考えることで、常識を打ち破っているのが近年の成功している業態です。
乱暴に言うと、その場所で普通に売上げられる額の2倍を売上げれば、家賃比率半分、人が2倍効率的に動けば人件費半分だよね?という発想です。これだけでざっくり20%浮きます。その浮いた20%を原材料費につぎこむ、というやり方です。売上2倍で家賃比率半分は出来たとしても、人の効率は倍まではなかなか難しいので、実際には様々なところで効率化が進んでいるのです。この効率化は売上対比のコスト比率だけではありません。宣伝広告等の集客の効率も段違いです。これはその日まで積み上げてきた努力とお店の評価のなせる業と言えるでしょう。
工夫が肝心
上記の計算結果を手にして、「よし!やるぞ!」となる方は稀です。「は?これっぽっちの人件費と原材料費で目標の売上が立つわけないじゃん!」となってしまうことが多いです。ですが、この壁を乗り越えるかどうかが、お店が今後末永く繁盛するかの分かれ目です。メニュー構成や人員戦略など、工夫をこらしてなんとか上記数値に当てはまるコスト配分を実現してください。
FQMサポートでは飲食店向けのメニュー開発・コスト削減のお手伝いも実施しております。「あ!そういうことだったんだ!」というご感想を頂くことも多いので、興味のある方は是非コンサルティングを受けてみてください。