菌が死なない、腐敗が早いのはなぜ?

みなさん、こんにちは!小橋博士です。

きちんと4度で保管しているのに、足が速い。
65度で調理しているのに、生菌数が多い。

さて、問題(原因)はなんでしょうか?

機械類の表示を信じてはいけません!

日本で生活していると、機械類の表示は非常に信頼性が高く、無条件に信じてしまいがちです。
ところが、業務用の機械はそれほど信頼性が高くないことも多いです。
その一例が温度表示です。精度を±0.5度で謳っていても、実際に測定してみると庫内温度のばらつきは±5度、などという実例もありました。

特に若くて経験の浅い人ほど機械類の表示をうのみにする習慣がついていることが多いです。
実測して確かめる習慣をつけていきましょう!

温度表示は温度計の設置場所の温度

冷凍庫・冷蔵庫・(湿)温蔵庫、すべてに共通しているのは体積があることです。
一方で、温度計は点でしか測定できません。
メーカー側の温度の校正は温度計に対してのみ行われています。
つまり、表示温度は使用者の直感で感じる庫内温度を正確には表してはいないのです。

表示温度はどのくらいずれる可能性があるの?

私が扱ったことがある範囲では、保温庫(冷蔵庫のようなものをイメージしてください)で600L程度のものでも表示温度で3度、庫内温度のばらつきでさらに5度、合わせて8度も異なることもあります。こちらは温度変化がほぼなくなった状態での値ですので、断熱が悪いことも原因のひとつです。

フライ油やウォーターバスなど基本的に断熱が難しい機械にいたっては、場所による温度のずれが3度以内なら優秀に感じるくらいです。

実際の温度を知らないとどうなるのか?

明確に問題となりうるのは食中毒です。上記の通り、機器の不備・不具合のせいで表示と仕掛品等の実際の品温が8度ずれているとすると、65度に設定していたものが57度程度にしかならないことになります。57度といえば、食中毒の原因菌として有名なウエルシュ菌の限界生育温度に非常に近いです(参照:ファクトシート ウエルシュ菌食中毒 食品安全委員会 平成23年11月)。4度で保管していたつもりが実際の品温が10度を超えていた・・・というケースに至っては一般生菌による腐敗も起こりえます。

必ず実測しよう

冷蔵庫や温蔵庫は、食材の保管・鮮度保持期間を劇的に伸ばしてくれることや、ピークタイムの調理時間の短縮に貢献するなくてはならないものです。ですが、性能を過信すると思わぬ品質低下(というよりも事故)を起こすこともお分かりいただけたと思います。実際の調理現場では保存前の食材の温度や保存時間などもいろいろ変化していきます。計画した温度で保管ができているか、できれば実際のオペレーション中もしくはそれに近い状態での食材の温度変化を実測することが大切です。

その際にも、1点だけ測定して満足せず、庫内の複数の点で1週間通して計測して傾向を見るなど、変化の発生に敏感になることも大切です。

投稿者: 小橋博士

FQMサポート代表 品質向上コンサルタント/農学博士 品質向上とコスト削減を同時に実現する新手法「グレーゾーン管理」の開発者 食品会社の経営経験有

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